簡単に言うと、1)世の中の事象の背後にある因果関係を特定して図式(ループ)で表現し、2)時間軸やループの強さ(因果関係の重み付け)などを要素に加えて、ソフトウェアによる数値シミュレーションを行うことで、将来の予測、取りうる手段の特定、リスクの回避などのアクションにつなげる学問である。
この因果関係には、増幅を促す正のサイクルの"Reinforce loop"(例:人口が増える→消費が増える→企業の収益が増える→人々の生活が豊かになり、子供が多く産まれる→人口が増える)と、ブレーキをかける負のサイクルの"Balance loop"(例:人口が増える→環境破壊が加速する→人間が住めるエリアが減る→人口が減る)の2つのフィードバックループが存在する。
多くのフィードバックループに、事象のストック量、ループの強さ、時間軸の影響などの数値的要素を加えて、シュミレーションを行うと、様々な結果を得ることができる。このパラメーター群を最適化することで、自社にとっての最適な戦略を検証し、意思決定に役立てる。
実際の授業では、エボラ出血熱の発生メカニズムやUberの成長モデルなど、最新の企業や事象を取り扱い、システムダイナミクスを考察するので、非常に面白い。
上記は、やや抽象的な説明でわかりづらいと思うので、下記のとおり、シェアリングエコノミーでも扱ったUberのケースを用いて、システムダイナミクスの導入編を紹介したいと思う。下記のモデル図を見ると、5個ずつのReinforce loop(R1-R5)とBalance loop(B1-B5)が存在する。
【Reinforce loop】
- R1)ユーザーの数が増える→収入が増える→広告やプロモーションを増やす→ユーザーの数が増える
- R2)ユーザーの数が増える→ドライバーの数が増える→ユーザーの数が増える(ネットワーク効果)
- R3)ユーザーの数が増える→レーティングが正確になり、ドライバーが淘汰される→顧客満足度が上がる→ユーザーの数が増える
- R4)ユーザーの数が増える→収入が増える→投資が増える→都市のカバレッジが増える→ユーザーの数が増える
- R5)ピックアップ時間が短くなる→顧客満足度が上がる→ユーザーの数が増える→ドライバーの数が増える→カバレッジが増える→ピックアップ時間が短くなる
- B1)ドライバーの数が増える→エリアのカバレッジが増える→ドライバーの待ち時間が増える→ドライバーの利益が減る→ドライバーの数が減る
- B2)ドライバーの利益が増える→競争が増える→ドライバーの利益が減る
- B3)ドライバーの数が増える→タクシー業界等からの圧力が増え、規制が強くなる→ドライバーの数が減る
- B4)ドライバーの利益が増える→ドライバーの数が増える→各ドライバーの利益が減る
- B5)ユーザーの数が増える→収入が増える→法人税が増える→政府が公共交通機関に投資する→ユーザーの数が減る
この図式モデルからわかるのは、様々な要素とその因果関係が絡み合い、Uberのビジネスが動いているということだ。最終的には、(R2のループ)ユーザーが増える→ドライバーが増える→ユーザーが増えるというネットワーク効果を最大にするために、どのように、ユーザーとドライバーを増やしていくか、そのための仕組みをどう構築していくかという視点で整理すると、会社が取るべき戦略も考えやすくなる。
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P.S. 南フランスの風景(要塞都市カルカソンヌ/ボルドーのワイン畑)
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