2015年5月27日水曜日

MBAでの苦労/前後で感じるギャップ

キャンパスビジットをされる方から、"MBAに来る前と来た後で感じるギャップは何か?"という質問をよく受ける。MITに対する期待値は高く、多様な機会に恵まれたおかげで、総じて満足しているのだが、細かいことをいうと、自分の力不足も含めて、ギャップやストレスを感じることもある。MBAでは"Get out of comfort zone"とよくいわれるが、あえて常にストレスのかかる状況に身を置き、これに慣れていくことも1つの成長といえる。自分も最初の学期は、初めての経験が多く、慣れるのに非常に時間がかかった。

以下は、自分がMBAで感じた教訓/ストレス/ギャップを紹介したいと思う。

<学校編>
1.日本人以外は限りなく、英語がネイティブに近いと覚悟せよ
MBAに来る学生の英語力はとてつもなく高い。日本人は、英語力を高めることも重要な目的の1つとして来ているが、他国の留学生はネイティブに限りなく近いと考えた方がよい。最初の学期のスタディーグループは、アメリカ人4人、ブラジル人、ケニア人と自分という構成だったが、ブラジル人とケニア人もほぼ英語がネイティブだったので、議論についていくのに本当に苦労した。自分の場合、誰かの発言を脳みそで理解している間に、他の人が話を始めるので、段々話についていけなくなり、それが原因で、これから自分が話そうとする内容はもう誰かがしゃべっているかもしれないと感じ、会話に参加するハードルがより高くなる。気にせずに思ったことを発言すればいいのだが、最初はその勇気もなかなか出ない。

MIT SloanのClass of 2016の統計を見ると、International Studentsの割合が42%となっている。だがその大半は、帰国子女、英語圏の大学・大学院を卒業、英語が標準語の仕事環境を経験してきている。従って、海外経験が少ない日本人の学生は、最初に英語で挫折に近いものを経験することになる。ここは避けて通れない道というか、これを乗り越えるために留学しているのだが、やはり覚悟が必要だ。英語環境にいること自体が、Get out of comfort zoneなので、この"精神と時の部屋"で修行することによって、徐々に耐性がついてくる。

2.日本のプレゼンスは限りなく低いと思え
アメリカのビジネススクールで感じるのは、日本のプレゼンスが限りなく低いことだ。Japan Passingは現実のものであると痛感する。オペレーションなど一部の授業では、日本のケースも出てくるが、同級生の発言を聞いていると、ビジネスにおける日本への関心は低い。例えば、ある製薬メーカーのケースで、アメリカ国外で最大の市場は?という質問に対して、学生から色々な国名が上がるが、正解である日本と答える人はいない。

”日本を宣伝するためにおまえらがMBAに行ってるんだろ” といわれると、確かにそのとおりだが、自分としては、世界第3位のGDPを誇り、かつてはJapan as No.1と言われた国が、世界からの注目度が極めて低いことについてある意味ショックを受けた。あと、日本は、国内プレーヤーが強く、言葉の壁があり、エントリーしづらい特殊なマーケットという認識がアメリカ人の意識にもあると思う。MITでは、China/India Labというアクションラーニングがあることもあり、これらの国は注目度が高い。

3.アメリカ人のための学校であることを覚悟せよ
授業の大半のケーススタディは、アメリカの企業を題材として取り扱っている。もちろん、世界をリードする様々なアメリカ企業から学ぶ姿勢は大事だし、非常によいことだと思うのだが、もう少し、アメリカ以外の企業に関するケースとバランスがとれているとよいと思う。アメリカ人は、基本的にアメリカが何でも世界一だと思っていて、外国への関心が低い学生も多いので、どうしてもそうなってしまうのかもしれない(笑)。

また、アメリカ国外における就職のサポートも極めて限定的だ。自分も、アジアでのインターンを探す時は、自力でリサーチを行い、コンタクトをとった。

4.カオスに慣れよ
グループワークでは、日本のように、誰かが話している間、皆が大人しく聞くという文化は存在しない。皆が自分の意見を言いあい、中には人の話を聞かないで自分の意見を通そうとする人もいる。一旦誰かの意見に賛同する人が現れると、見落としているポイントがあっても、どんどん話が進んでいってしまうこともある。議論をリードするには英語力的に不安があり、こうしたカオスな状況に慣れるのは時間がかかったが、これまでに述べてきた通り、リーダーシップのスタイルチームワークでの貢献には様々なやり方があるので、その時々に応じたベストな道を探していくしかない。

5.時間の感覚を修正せよ
ミーティングでの遅刻や、チーム内の課題の締切を設定してもそれ通りに成果物が出てこないことは日常茶飯事。ラテン系と食事をする場合は、ラテンタイムといって、開始時間の30分後に会場に行っても誰もいないことがほとんどだ。日本の5分前行動カルチャーに慣れた人間だと、最初はイライラするが、郷に入れば郷に従えで、これは慣れていくしかない。その一方、課題の最終締切には間に合わせてくるので、本気になればできるのだと思う(笑)。

<遊び編>
1.パーティーへの対応を考えよ
欧米・ラテン系は、夜になると、どこかのバーで軽く飲んで、その後2次会的なノリで、クラブに行く。最初は、友達をつくろうと思ってクラブに行っていたが、うるさくて英語が聞き取れないし、基本踊りに行く場所なので、深い話もできないので、段々足が遠のく。アジア人で最後まで行ってる人は非常に少なかったと思う。カルチャーの違いもあるのだと思う。ただ行かなくても特に困ることはないので、気にする必要はない。日本人はホームパーティーなどを開き、少人数でじっくり話しながら、友人と仲良くなっているケースが多いと思う。

2.すべての人と仲良くなる必要はない
日本人は誰にでも愛想よく振る舞う傾向があると思うが、アメリカ人にはそういう感覚はない。どこのMBAの学生に聞いても、一定の割合のアメリカ人は、アメリカ人だけでつるもうとしていて、インターナショナルの学生に興味を示さない。これは日本で、一定数の日本人が外人とつるもうとしないのと同じかもしれない。

自分が、マイノリティーのグループに分類されることが初めてだったので、最初は面を食らった部分もあるが、慣れていくしかない。とは言っても、非常に親切で協力的なアメリカ人もたくさんいるので、基本的には心配する必要はない。すべての人と仲良くなろうとするのは難しいといっているだけである。

3.金銭感覚には留意せよ
MBA生はバックグランドがバラバラで、多くの人が借金を背負って来ている。家がお金持ちだったり、投資銀行出身とかだと、羽振りがいいが、ギリギリに切り詰めて生活をしている人たちもいる。以前、クラスメートが日本食を食べたいというので、食事会を企画したのだが、ある学生から"自分は$20以上の食事はできない"と個別にメールが来て、レストランを変更せざるを得なかったことがある。こうした調整は労力を伴うが、非常に大事なことなので、皆が楽しめるよう、様々な配慮を忘れないようにしたい。余談になるが、アメリカでは、食事会でも、常にベジタリアンメニューを用意するなど、多様な食文化に関する配慮を忘れてはならない。

以上が、自分がMBAで感じた苦労/前後で感じるギャップだ。

卒業まであと9日!!!

P.S. ドイツのノイシュヴァンシュタイン城/ケルン大聖堂



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