2015年5月12日火曜日

リーダーシップの4つの切り口とたった1つの重要なこと

MIT Sloanには、Communication for Leadersという1年生の必修授業がある(先日紹介したCommunication Labとペアになっている)。コミュニケーションの幅広いトピックについて、様々なソフトスキルを学ぶ授業である。今回は、Sloanが教えるリーダーシップの4つの切り口と自分の経験から感じた最も重要なリーダーの要素について考えてみたい。

1.リーダーシップの4つの切り口

Sensemaking: 

常に社会の変化を敏感に感じ取り、それが事業に与える影響を解釈する力。日頃から顧客、従業員、競合企業、投資家など様々なソースから情報を集める。可能であれば、小さな実験をして、自分の考えが正しいのか、新しいオプションはないのかを検証していく。自分が常に正しいと思っている人、周りの変化への感度が低い人は注意が必要だ。

Relating: 

自分の意見の主張と他人の考えに傾聴するバランスをとり、信頼関係を築き、ネットワークをつくる力。例えば、相手の意見をオープンに、かつジャッジせずに聞き、相手の考えを理解する。相手の意見を引き出そうとする努力も必要である。また自分の意見を述べるときは、他人がどう反応するかをあらかじめ予測し、それに応えるための理由付けも準備する。他人や他人のプロジェクトを、直感で批判しがちな人は注意が必要だ。

Visioning: 
方向性を共感する人々とあるべき未来像を作りあげる力。他人が何に熱意を感じているかを感じ取る。たとえ、そのビジョンを達成するやり方を知らなくても、ビジョンが非常に力強いものであれば、他人がやり方を考えてくれる。自分のメッセージを伝えるためのイメージ、ストーリー、メタファーを使うとさらに効果があがる。逆のパターンは、”ついついなんでこんなことやるんだろう”と考えたり、1つのことになかなか打ち込めないタイプの人である。

Inventing: 

アイデアを現実のものにするためのやり方を考え、課題を解決するための行動をとる力。今のやり方が最適と考えず、常にどういう選択肢があるか、外部環境の変化によってどう取りうる手段を変えるべきかを考え続ける力である。会社のビジョンと、自分たちが今実際にやっていることのギャップを意識し、それを埋める努力が必要である。

もちろんこれらがすべて完璧な人はいない。必要なのは、すべてを完璧にするのでなく、自分の強みと弱みを認識し、それを補完してくれるパートナーを探すことである。MITに来る投資家が、共同創業者がいないスタートアップには投資をしない、というのは、スキルに加えて、リーダーシップでも異なる役割を共同創業者同士に期待しているのだと思う。

日本人は、自分自身も含め、RelatingとInventingが強く、Visioningが弱い傾向にあると思う。自分がMedia Labでインターンしたときのボスは、熱意と巧みな話術で、多くの人やお金をひきつける能力を持っていた。その一方、実際にビジョンをどう実行に移すかとなると、全く詰まっていないところが多く、こちらが冷々させられたり、しまいには"君が考えてくれ"的なことを突然言われることもあった。上記のポイントに当てはめれば、Visioningが突出している一方で、Inventingが弱いといえる。

2.リーダーに最も重要な要素

リーダーに最も重要な要素は何か。自分の中での現状の回答は、どんな逆境でもあきらめず、自分のビジョン/仕事にコミットし続け、発信し続ける人だ。これは意味がない、これは無理だ、と周りに言われ続け、時に孤独を感じながらも、最後まであきらめずに結果を出すことにコミットするには、相当な覚悟がいる。

5 Level of Leadershipという考えがある。以下の図のようにリーダーシップにはPosition、Permission、Production、People Development、Pinnacleの5つの段階がある。例えば、課長になったから、リーダーだと思っている人は、1のPositionで周りに認められているに過ぎない。人はあなたとの人間関係から、ついていきたいと思うようになり(Permission)、あなたが結果を出すことで、さらに信頼関係が深まる(Production)。あなたが、周りのひとりひとりに明確なベネフィットを提供することで、さらに多くの人々がついてくるようになり(People Development)、最後はあなたの名声/人格によって、人がついてくるようになる(Pinnacle)。



Source: http://www.leadershipnow.com/leadingblog/leadership_development/


MBA生活のリーダーシップで特徴的なのは、1のPositionがない点だと思う。つまり上下関係がないので、自分の言うこと聞いて!といっても"ヤダよ!"って言われてしまうか、"やるよ!"って言われて待ってたけど、全然反応がないこともある。

自分にとっての最優先事項であっても相手にとってはそうでないからだ。また、常に同じメンバーでグループ課題をやっているわけではないので、十分な人間関係が形成されないまま、議論がスタートすることも多い。結果として、自分がいかに結果を出すか(Production)が信頼を得るために、重要になっているケースが多いように感じる。

人に権限を移譲して(Delegation)、やる気にさせることは(Motivation)、言うは易く行うは難し。一部のSelf motivatedな人以外にはなかなか機能せず、人に権限を移譲した途端にプロジェクトが止まってしまうリスクがある。

だからこそ、一番重要なのは、自分がコミットし続け、周りからの信頼を勝ち取っていくことだと思う。結果として、人をやる気にさせる近道になる。MIT Asia Business Conferenceで他のオーガナイザーの反応が悪かった時には、自分はこのやり方を使い、先が少しずつ見えてきた段階から、周りのモチベーションもあがり、徐々にチームとして機能するようになってきた。

自分がやってることを正しいと信じて突き進む。そしてうまくいかなかったら、少しずつやり方を変えていけばいい。リーダーシップとは、日々の小さな実験を繰り返しながら、磨いていくものなのだ。

卒業まであと24日!!!


P.S. イグアスの滝(アルゼンチン側)



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