2015年5月22日金曜日

フリーミアム時代のデジタルマーケティング

一時期、FREE(フリー)という本が日本でも流行ったので、フリーミアム(Freemium)という言葉を聞いたことがある方も多いと思う。基本的なサービスを無料で提供し、追加の機能などに課金するビジネスモデルだ。今回は、自分が履修した Entrepreneurial SalesとDigital Marketing & Social Media Analyticsの授業で扱ったフリーミアムをご紹介したいと思う。フリーミアムの代表例として取り上げられるクラウドストレージを提供するDropboxはMITの卒業生であるDrew Houstonが創業した会社である(MITの学生にはDropboxの容量が無制限に与えられている)。MITの2013年の卒業式での彼のスピーチも感動的なので、よかったら見てみてほしい(日本語スクリプト)。

That night, I realized there are no warmups, no practice rounds, no reset buttons. Every day we're writing a few more words of a story. And when you die, it's not like "here lies Drew, he came in 174th place." So from then on, I stopped trying to make my life perfect, and instead tried to make it interesting. I wanted my story to be an adventure — and that's made all the difference. - Drew Houston's Commencement address

フリーミアムとは
  • 価格モデルであり、販売モデルであり、ビジネスモデル
  • デジタルでのサービス提供により、製造/輸送等のコストをゼロで実現できる
  • ユーザーになる心理的なハードルが低い
    FREE “Zero as emotional hot button - source of irrational excitement”
  • 興味がある人を実際のユーザーに転換しやすい。営業人員ゼロで実現できる
  • 多くのユーザーを少ないコストで獲得できるため、ユーザーのフィードバックから、サービスをさらに改善できる
  • 有料会員率はDropbox1.6ー4%、LinkedIn0.8%,、Evernote1−6%で、10%以下が一般的(Source: HBS Case Study)
  • コンバージョンレート(無料会員から有料会員になるレート)を高めることが重要
  • コンバージョンレートが低いので、ターゲットとする市場が大きく、ネットワーク効果が働くビジネスでないと成功が難しい
  • プライシングモデルの選択は最重要
    (どの機能に課金をするのか、どのような価格パッケージを用意するか)
  • 大多数の無料会員を活かすには、広告掲載収入や行動分析したデータの販売が考えられる

フリーミアムモデルを分析するプロジェクト

近年、欧米を中心に、音楽ストリーミングサービスが驚異的なスピードで成長している。その代表例が、SpotifyとPandoraである。面白いのは、この2社ともフリーミアムモデルなのだが、全く異なる戦略をとっている。Spotifyは、有料ユーザーからの収益が大半を占めるのに対し、Pandoraは広告収入が大半を占める。2012年において、Spotifyはアクティブユーザー36%、有料ユーザー10%、Pandoraはアクティブユーザー28%、有料ユーザー1%となっている。

Digital Marketing & Social Media Analyticsの最終プロジェクトでは、音楽ストリーミングサービスを提供する
架空の会社の、過去数ヶ月分のユーザーの特性データ(ユーザーやその友人の性別、年齢、国籍、Post、Songs Listened、Loved Tracks、Paid user) が与えられ、1)有料会員の特徴は何か、2)無料会員を有料会員に転換するにはどのようにマーケティングを行うべきか、3)有料会員のコミュニティーへの関与(Social Engagemenet)を高めてその友人を有料会員にするにはどのような手法をとるべきか、を分析する。

        




実際のビジネスにかなり近い形で、欠陥のあるデータも大量にあるので、それらをまずは整理したうえ、回帰分析(Regression analysis)を行い、以下のような表から実際にAdaptor(有料会員)と相関係数が高いものを抽出する。

 screenshot 2.png



この表からわかるのは、LovedTracksの数や有料会員の友人数が多いユーザーは、有料会員に転換しやすいということだ。そこで与えられた無料会員のデータから、上記の特徴に当てはまる人を抽出し、この層に対して、集中的にマーケティングを行うことを提案した。加えて、Social Engagementを高める方法として、既存の有料会員をFacebook上で認知できるようにすることや、有料会員から無料会員への特典コードの配布などを通じて、友人間の影響(Peer influence)の強さを実験することを提案した。


Digital Marketing & Social Media Analyticsの授業は、実際の企業が実務で行っている内容に近かったので、非常に面白かった。

卒業まであと14日!!!


P.S. Boston Celtics(NBA)の今期最終試合
(プレーオフの1回戦でLeBron James擁するCleveland Cavaliersに敗退)





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