私費の場合、MBAに来るには、1)仕事を辞めて2年間無給(2年分の機会損失)、2)2年間の総額で1,500万円の授業料、3)最低でも1,000万円の生活費がかかる。つまり、機会損失も含めると、4,000万円以上のお金がかかっていることになる。そのため、多くのMBA生は、金利の安い学生ローン(アメリカだと金利6%前後)でお金を調達し、夏のサマーインターンシップやティーチング・アシスタント(TA)などをしながら収入を得て、生活費の足しにする。MBAを積極的に採用している米国の企業は、それなりの給料を提示するので、多くのMBA生は数年かけてローンを返済していく。
自分は、MIT Sloanが提供するCareer Development Office(CDO)の就職サポートは活用しなかったが、日本人の先輩方が教えてくれたTipsでなるほどと思ったものを共有したい。
それは、MBAにきたことの価値=”1軸は変えられる”である。
軸とは、場所、業種、職種の3つである。1軸を変えるのはMBAパワー、2軸はかなり大変、3軸はほぼ困難といわれている。
1.アメリカで就職したい場合
日本人がアメリカで、アメリカの企業に就職するのは、実際かなりハードルが高い。F1ビザの留学生は卒業後に、OPT(Optionlal Practical Training)を取得できるので、12ヶ月アメリカで働くことができる。しかし、その後は原則として、H1Bビザを取得できなければ、強制送還されてしまう。H1Bビザは、企業からのサポートに加え、毎年抽選で割当が決まるので、企業側にとってH1B以外のビザを持たない学生を採用する負担・リスクは大きい。クラスメートが今年のH1Bビザは、例年以上に競争が厳しかったといっていた。
それでもそれを補うだけのスキルや能力がある場合は、土俵に上がることができる。例えば、日本のトヨタで生産管理の仕事をしていた場合、アメリカのGMで生産管理の仕事につくチャンスがある。上記でいう1軸(場所)の変更だからだ。しかし、GMで新規事業開発の仕事をしようとすると、場所と職種を変えることになり、ハードルがかなりあがる。米国のP&Gで新規事業開発をしようとすると、自動車業界から離れて、3軸すべて変えるので、就職できる可能性は極めて低くなる。
例外は、以下のとおりだ。
- アメリカ国籍/永住権あり(ビザの面で、雇用主に負担をかけない)
- 英語がネイティブ級(場所のデメリットを最小化できる)
- 著名な外資系コンサルティング会社出身(前職で同様のプロジェクトを経験していれば、業種や職種の変更がハードルになりにくい)
- スタートアップへの就職(業種への壁は低いが、ビザのサポートが弱い。レイオフのリスクも大企業より高い)
- 起業(ビザが問題になるケースが多い)
- 特別なコネあり
上記の例外に当てはまらず、アメリカで転職活動をする場合は、下記のようなパターンが考えられると思う。下記の1が、最初に述べた、「1軸は変えられる」のケースであり、米国企業で働く醍醐味を一番味わうことができると思う。それ以外は、日本人という強みを活かしながら、アメリカで就職することになる。
- 同業種の非日系企業で、同職種の担当者(スキルで差別化)
- 日系企業の米国支社/事務所の現地採用(日本語で差別化)
- 非日系企業の日本市場の担当者(日本語/日本市場の知識で差別化)
- 日本に関連するビジネスで米国を拠点に起業(日本市場の知識で差別化)
2.日本で就職したい場合:
私が知る限り、以下の会社は、オフィシャルに欧米のMBAを採用している。最も手っ取り早いのは、ボストン・キャリア・フォーラム(通称、ボスキャリ)の参加企業を見ることだ。日本で就職する場合は、2軸、3軸の変更も比較的やりやすい。
投資銀行: Goldman Sachs、Morgan Stanley、Merrill Linch、Deutsche Bank、J.P. Morgan
コンサルティング会社: McKinsey、BCG、Bain & Company、A.T. Kearney、Roland Berger、Strategy & Co、Dream Incubator
事業会社: P&G、Johnson & Johnson、ファイザー、日本イーライリリー、アマゾン、楽天、ユニクロ
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なお、MIT Sloanの2014年の調査によれば、MIT Sloan生の就職先は、McKinsey & Company (32) 、Bain & Company (17) 、Amazon (16) 、Boston Consulting Group (15) 、Apple (10) 、Deloitte Consulting (9) 、Google (9) 、PwC Advisory (9)と続く(カッコ内は人数)。コンサルティング会社がMBA直後の就職先として人気がある。最近の傾向としては、投資銀行の人気が低下し、テック系の会社(Google、Facebook、Apple等)の人気が上昇している。MIT Sloanは、Tech系の企業への就職者の割合が26.1%(2014年)と非常に高くなっている。起業は、同級生から最も注目と尊敬を集めるし、アントレに強いMITでは多くの学生が興味を持っているが、MBA卒業直後に起業する人は、2014年で7.4%と少ない。冒頭に述べたローンのこともあり、アメリカ人といえども、リスクを回避する傾向にあるのだと思う。
自分が就職活動について思うことは、日本人のMBA生は非常に恵まれているということだ。なぜなら、彼らは日本に戻っても、MBAのローンを返済するだけの給料を支払ってくれる企業を簡単に見つけることができる。例えばインド人のクラスメートは、MBA直後は自国に戻ろうとしない。なぜなら、インドに戻っても高給の仕事が見つからないからだ。中国人は、ケースバイケースだが、中国で仕事を見つける場合も、MBA生同士の競争が激しい。例えば、AXIOMの調査によれば、2014年入学の米国MBA(34校)の日本人は148名(社費108名、私費40名)となっており、他の国のMBA生に比べて人数が少ないので、就職活動の競争は厳しくない。
以上が、簡単ではあるが、日本人MBA生の就活の概要だ。
卒業まであと15日!!!
P.S. (現在滞在中の)メキシコのテオティワカン遺跡
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