2015年6月2日火曜日

魔法のリングの会社で働く

今、アメリカの国立公園内に滞在していて、Wifiや携帯の電波がない、自然との共生を楽しんでいる。昨日更新できなかったエクスキューズなのだが、気を取り直して残りの記事も書いていきたい。

Ring(社名はLogbar.Incだが、以下製品名のRingで統一する)という製品を知ったのは、2013年の秋。当時Ringが公開したYoutubeの動画がMITの中で話題になっていた。”めちゃくちゃクールだ”とか”こんなの1年でできるはずない”、と友人たちが話をしていたのを思い出す。コンセプトビデオはこちらなので、まだ製品を知らない方がいたらぜひ見てほしい。

Ringは、"Shortcut everything"をコンセプトにするウェアラブルデバイスである。指輪型のデバイスを装着し、指でジェスチャーを描くことで、電球、TV、音楽のOn/Offや、様々なアプリを起動することができる、Internet of Things(IOT)の代表的製品だ。

当時、会社に関する情報がほとんどなかったのだが、調べて見るとどうやら日本の会社らしいということがわかった。ハードウェア・スタートアップの経営に関心があったので、アーリーステージの会社が、資金調達、生産、物流、販売をどのようにやっているか学びたいと思い、会社に直接メールを送り、2週間だけ在籍させてくれないかとお願いしたところ、CEOの吉田さんから快諾いただいた。

当社はコンセプトを発表してから、7ヶ月でKickstarterキャンペーン、1年で製品販売までこぎつけた。ハードウェアのスタートアップとしては異例のスピードだと思う。

私がお邪魔したときは、ちょうど最初の製品の販売直前だったので、販売契約書などのドキュメンテーション/物流の構築/製品パッケージの検討など、ビジネス面での動きが出始めているタイミングで、非常に面白かった。先日紹介した初期のハードウェア・スタートアップ経営者が絶対に覚えておくべき数字集のセミナーに参加したのは、この会社で働いた後だったので、Ringをイメージすることで、セミナーの様々な数字がスーッと頭に入ってきた。

当社について、個人的に特に印象的だったのは、1)マーケティング戦略が非常に素晴らしく、2)ファンディングが理想的に進んでいる点だ。

マーケティングについては、ビデオマーケティングをうまく活用することで、効率的にグローバル展開している。長々としたプレゼンテーションや事業計画書より、一瞬で人を惹きつけるビデオのようなコンテンツの重要性を改めて感じた。日本のスタートアップでありながら、SXSWやCES等のアメリカの展示会を活用し、米国メディアからも注目を集めた。2015年には、CESのInnovation AwardでHonoreeも獲得している。Ringは、イベントに出展すると、必ずビデオを撮影/編集し、ウェブサイト上で公開する。マーケティングにおけるリサイクルの重要性は、セルビアのスタートアップへのコンサルティングでも少し触れたが、それを忠実に実行している会社という印象を受けた。

ファンディングは、ハードウェアスタートアップを最も苦しめるものだと思う。最近は、日本のVC投資もバブっているので、ハードウェアスタートアップに数億円という話も見なくはないが、自分の金融機関の経験を踏まえても、ハードルは高い。Ringは、今のところ、初期投資から、クラウドファンディング、VC投資まで、理想的にファンディングを進めている。初期の従業員を雇う費用は、初期投資がなければ難しかっただろうし、Kickstarterがなければ早期に大量生産までこぎつけるのは難しかっただろう。RingはKickstarterで約$88万ドル(約1億円)を調達しており、世界的に見てもハードウェアスタートアップとして、Kickstarterで最も成功した会社の1つだ。

2015年の4月に第二弾のRing Zeroを発売している。Ringの道のりもすべてが平坦だったわけではないが、日本を代表するハードウェア・スタートアップとして、今後の益々の活躍を期待したい。自分も世界をわくわくさせる製品をつくりたいと感じさせてくれる会社であった。

卒業まであと3日!!!

P.S. アメリカ・イエローストーン国立公園


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