ボーゲル塾について
私が参加するボーゲル塾は、ハーバードの元教授でEast Asian Studies分野の第一人者であるEzra F. Vogel 先生の私塾で、"Harvard 松下村塾"とも呼ばれている。 Vogel元教授が1979年に発表した”Japan as No.1”というレポートを通じて、日本企業の高度成長期の戦略が広くアメリカに知られることになった。 ボストンで生活している日本人が月に1回Vogel教授の自宅に集まり、 日本の将来について英語で議論を行う勉強会である。 勉強会は「内政」・「国際政治」・「国際経済」・「企業の国際競争力」の4つの分科会に分かれ 、月毎の担当者がそれぞれのテーマで発表を行いその後ディスカッションをする。
自分が今年度所属している国際経済分科会では、ODA、TPP問題、外国人受入問題から、今注目のアジア投資インフラ銀行など様々なトピックを扱う。特徴的なのは参加者の多様なバックグラウンドである。 ハーバード・MITなどのMBA学生はもとより、ハーバード・タフツ・MITの他学部などに通っている 省庁・企業・研究者の方々と知りあい、議論できる場は日本にすらなかなか無いと思う。
このような方々と熱く議論を重ねながら、ネットワーキングできる貴重な機会で、 ビジネススクールとはまた違った視野の広がりを体験できるボストンならではの経験だと思う。
明日はいよいよボーゲル塾の卒業式だ。Vogel元教授への感謝と共に、議論を行ってきた同じ分科会の方々や、普段顔をあわせることの少ない他の分科会の方々との交流を楽しみたい。
外国人受入問題(広義の移民問題)について
自分が担当した「外国人受入問題」の事前勉強会資料を末尾に添付するので興味が在る方は参照していただきたい。参加者は全員日本人だが、本番は資料及び議論共に英語になる。外国人受入問題は、賛成派と反対派がほぼ同数で非常に面白いトピックだった。私自身もまだまだ素人であるため、もしご意見がある方はコメントで教えていただきたい。
私個人としては、総人口及び生産年齢人口の急激な減少に、日本経済/日本企業が耐えぬく体力はないと考えているので、外国人の受入強化は、必須と考えている。例えば、人口が減少すれば、国内マーケットに過度に依存しているサービス業などは大きく業績が悪化し、リストラの増加による失業率悪化/経済低迷/治安悪化などの懸念がある。
治安面で、外国人=危険というのは間違った考え方で、貧困=>治安悪化だと思ってるので、経済が衰退すれば、日本人の所得が下がり、治安は悪化する。カルチャーの面でも、単一民族であるがいえ、日本は排他的な部分があるが、移民の1-2世になれば彼らがうまく日本の社会に適応できるのではと、米国のアジアンアメリカンを見て感じる。1980年代後半ー90年代前半に日本で移民が増加したときとは、国内の経済状況が大きく異なる点も忘れてはならない。
国のグランドデザインとして、人口減少を許容するという考え方もある。ただその場合は、高齢化が進むので、低福祉・低負担の国づくりになる。そして、ロボット等を駆使して、労働生産性を高め、一人あたりのGDP向上をターゲットにしていくことになると思う。ただ、日本は人口規模からして、北欧やシンガポールのように小回りがきかないので、実際には難しいのではないかというとが個人的な意見だ。
外国人受入問題とは、広義の移民問題だが、移民の国といわれるアメリカでも、大規模な移民制度改革案が議会を通過できず、昨年の11月にオバマ大統領が自身の権限で大胆な改革を打ち出すなど、大きな国内問題となっている。やり方が強引な部分はあるが、下記のビデオをみて、実態に則した形に修正しようとする「不法移民500万人の救済措置」は英断だと思うし、オバマ大統領の信念に基づく強いリーダーシップと発信力には敬意を表する。
卒業まで28日!!!
P.S. 昨日のMITキャンパス(春の陽気♪)
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Vogel塾 事前勉強会 - 外国人受入問題
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議論の目的:
· 今後日本の生産年齢人口が年間約50万人減少する中、日本の経済成長や年金制度等の社会システムを維持するため、(女性/高齢者等の活用に加えて)移民を含む外国人受入制度をどう活用していくべきか
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高度人材の受入方針:
§ 日本の全就業者の1%にあたる72万人(2012年)が外国人材 <シンガポール35%、アメリカ15%、欧州5−10%>。うち高度人材はわずか13万人
§ 日本を含めた世界各国が高度人材を積極的に受け入れる方針で、世界での人材獲得競争が激しく、人材を受け入れるための環境整備が重要
§ 留学生の受入拡大・国内企業への就職支援、外国企業の誘致等の施策を強化方針
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現状における非高度人材の受入方針:
§ 開発途上国の人材育成を通じた技術移転を目的とする外国人技能実習制度が非高度人材を受け入れる唯一の窓口。FTAや EPA に基づき、フィリピン・インドネシア等から看護師・介護福祉士等を受入
§ 成長戦略における今後の検討方針
①対象業種拡大(現状は製造業、建設業、農業等)、②受入人数の拡大、③実習期間の延長(建設/造船:3年→5年)、④管理体制の整備
①対象業種拡大(現状は製造業、建設業、農業等)、②受入人数の拡大、③実習期間の延長(建設/造船:3年→5年)、④管理体制の整備
§ 地域毎に必要とする外国人材を絞り込むのも一案(カナダ:州政府指名移民制度)
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非高度人材の受入規模拡大の効果と課題
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(効果)数百-数千万人の移民受け入れによる労働人口減少の補填による経済活性化及び社会保障システムの健全化
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(課題)①国民世論の理解(治安面の不安、単一民族国家としての心理的抵抗)、②中長期的な日本国民の雇用機会維持、③移民受入により税・社会保障負担が増加するリスク、④政策としての実現可能性(数百万人規模の人材をどこから集めるのか、多省庁にまたがる多岐に渡る問題を整理し、中長期的な移民政策をどう設計するのか)
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事例:オーストラリア<外国生まれ人口比率27% 世界第3位>
少子化や労働力不足の問題から72年に白豪主義を撤廃し、以降、台湾、香港、中国本土から華僑を中心に約800万人の若い中国系移民が流入し、経済発展に大きく寄与
少子化や労働力不足の問題から72年に白豪主義を撤廃し、以降、台湾、香港、中国本土から華僑を中心に約800万人の若い中国系移民が流入し、経済発展に大きく寄与
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外国人受入のための環境整備
· 日本語を含めた日本文化等の理解も含めたコミュニケーションの問題
· 医療・年金、住宅、子弟の教育等の生活環境の整備
(移民統合指標MIPEX32位/37カ国中、教育分野と反差別分野が特に低い)
(移民統合指標MIPEX32位/37カ国中、教育分野と反差別分野が特に低い)
· 経済国・留学先としての魅力向上(企業の立地競争力:日本24位、Times世界大学ランキング;東京大学23位)
議論のテーマ
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高度人材の受入は現政策に基づき進めるべきという認識の下、非高度人材の外国人受入政策(受入規模、受入人材基準)をどう設計するべきか?
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外国人受入のための環境整備をどう実現していくか?
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