2015年5月29日金曜日

中国企業の海外戦略における苦悩

China Labという中国企業にコンサルティングをする授業で、中国の北京に2週間滞在した。この授業は、中国の学生とチームを組むのが特徴で、MIT Sloan MBA2人(インド人と自分)と清華大学の中国人MBA2人でチームを組んだ。

我々のクライアントは、大学発の特許を有する高性能LED電球をつくるスタートアップで、アメリカへの海外展開に関する調査の依頼があった。中国でもまだほとんど売上がない状態だったが、コスト面が重視される中国市場より、高性能商品が求められる先進国市場を攻めたいという理由で、海外進出を優先している。

社長が、アメリカにコネのあるブローカーとアメリカの大手量販店との取引を進めており、アメリカ進出の価格戦略を策定するというものだ。こちらでも紹介したが、バリューベース、マーケットベース、コストベースでの価格算定を行ったうえ、最終的に、プレミアム市場(高価格)ではなく、スタンダード市場(中価格)への進出をアドバイスした。

照明の色の質が重視されるプレミアム市場では、当社製品の最大の特徴である”長寿命”が差別化要因にならないことに加え、フィリップスやGEなど著名な照明メーカーが競合としてひしめく中で、無名の中国メーカーがシェアを拡大していくのは非現実的であった

一方、スタンダード市場は市場規模が大きく、"長寿命"などの特徴が重視されるので、他社より安い価格を設定できれば、価格面と性能面で競争力のある製品として、無名のブランドでもシェアを拡大できるのではないか、という仮説だ。

しかし、現状では、スタンダード市場に進出するにも、当社のコスト構造の高さがネックになっている。アメリカで製品を販売する場合、スタートアップ経営者が絶対押さえておくべき数字集でも述べた通り、輸送費(中国から米国への海上輸送と米国内での国内輸送)、関税、そして約30%の量販店に対するマージンがかかるので、コストベースで積み上げていくと、製造コストの約2.5倍が最終販売価格の損益分岐点になる。

LEDはコモディティ化が進んでおり、ブランド力を持つ欧米メーカーの高性能品でもかなり安売りされている。従って、現状のスタンダード市場に進出した場合、我々の試算では、当社の利益がほぼゼロか、若干赤字になってしまう可能性があった。そこで、量産化によるコストダウンに加え、実際に工場を見学し、生産ラインの課題の指摘や自動化の提案などを行い、コスト競争力のある製品をつくるための土台づくりが重要である点を強調した。

MBAの授業では、様々な企業のCEOから海外進出の話を聞くことが多いが、一部の成功企業の裏で、多くの企業が失敗している。ネットワークを持たず、土地勘のないマーケットを攻略するのは非常に難しい。本件でも、中国のプレミアム市場と、アメリカのスタンダード市場のどちらに経営のリソースを割くか、CEOは非常に難しい選択を迫られていた。

自分とインド人の同級生は、過去に仕事でLED市場の調査やコンサルティングをしたことがあったので、当社のCEOと深い議論ができ、非常に楽しい滞在となった。

卒業まであと7日!!!

P.S. 週末に旅行した兵馬俑と西安



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