2015年5月11日月曜日

初期のハードウェア・スタートアップ経営者が絶対おさえておくべき数字集


ボストンのBoltというハードウェア・アクセレレーターのHardware By The Numbersというセミナーが、正直、MBAのアントレ系のどの授業より内容が濃く、実践的だったので、シェアしたいと思う。

MBAの2年間、ハードウェア・スタートアップに関係するプロジェクトを複数行ってきたこともあり、自身の経験を踏まえても腑に落ちるものが多かった。チームの組成から、製品開発、ファンディング、生産、物流、販売、エグジットまで、スタートアップのタイムラインに沿って、網羅されている。

以下、アメリカのハードウェアスタートアップ向けで、かつ経験値的な要素もあり、すべての会社に当てはまるわけではない前提で参照いただきたい。

チーム
  • Founderは2人(プログラマーとディールメーカー)
  • 創業者の株式を50:50でわけるのは避けるべき(どちらかが会社を去る際にトラブルになる)
  • 製品化/規模拡大するために必要な従業員は〜8人(4人のハードウェア担当、2人のソフトウェア担当、2人のオペレーション、ビジネス担当)
  • 超優秀な従業員を採用するために必要な株式は3−10%。シリーズA後にCEOを採用する場合に必要な株式は7−10%
  • 最初の従業員のために用意する株式は2−5%。次の10人に合計10%、次の20人に合計5%、次の50人に5%と続き、最初の80人に長期でのアップサイドを提供
  • ストック・オプションを行使するために必要な最低勤務期間は平均4年
  • 最低10%のオプションプールを新しい従業員向けに用意する
製品開発
  • 製品開発サイクルは6ヶ月が目安、週1で新しいプロトタイプをつくるペースがよい
  • 製品開発/デザインでコンサルタントを雇う費用は$10,000-50,000。IDEOなどのトップファームは、$500,000
  • 特許の権利化費用は、$35,000。権利化にかかる期間は3年以上。特許は取る価値があるか、慎重に見極めるべき
  • ネットプロモータースコア(NPS)は70を目指す(NPSとは、顧客のロイヤルティーを測るツールで、製品の10段階評価で9−10をつける人の割合(%)から、1−6をつける人の割合(%)を引いたもの)
投資
  • 成功しているKickstarterのファンディング額の平均は$92,000。もし$100,000以上のファンディングをターゲットに設定していたら、ファンディング額の平均は$423,000
  • リードベンチャーキャピタルの出資比率のターゲットは20%
  • シードラウンドの投資前価値は平均450万ドル
  • 一回のファンディングで調達する額は、18ヶ月必要な資金
  • ファンディングにかかる期間は平均3−6ヶ月
  • AngelListに登録しても、過去に投資の引受実績がなければ、投資は受けられない
  • 投資家向けのよい説明資料は15ページ前後
  • 融資と投資のバランスは2:1がよい
生産
  • デザインと生産に使う時間は1,000:1(小さなデザイン変更が生産工程に与える影響大)
  • 中国の生産パートナーが引き受ける最低出荷量は5,000個(金額ベースでは年間1百万ドルの出荷金額)
  • 生産委託の際は、10−12の生産パートナーの調査を行い、5つに見積もりをとり、2つと交渉する
  • 生産パートナーを探すプロセスは、調査、見積もり、交渉、契約まで3ヶ月程度
  • デザインの提出から、ライン立上げ、生産、製品の船積みまで平均9ヶ月(早いと6ヶ月)
  • 見積りで注意深く交渉するのは金額の高い3−4つの部品(メモリ、プロセッサー、通信パーツ)に絞るべき(かける時間あたりの効果が限定的であるため)
  • 中国での射出成形金型の費用は最もシンプルなタイプで$6,500
  • 間違ったプロセッサーを選択すると、(ファームウェアが複雑であれば)コードの書き換え等で6ヶ月のタイムロスになる
  • 初期の歩留まりは95%程度。99.5%をターゲットにする
  • 米国で製品認証のテストにかかる費用は最低$15,000
  • 段ボールのコストは$0.25−0.50、製品パッケージは$5−15
物流
  • 中国の船積みからアメリカまでの海上輸送は4週間
  • 航空便は、船便の10倍のコスト。輸送は2日間
  • 関税は地域により異なるが出荷金額の3−5%が一般的
  • サードパーティーロジスティクスは利用する価値あり。出荷金額の2−5%
  • カリフォルニアからニューヨークまでの陸送はパレットあたり$1,000。輸送に4−5日間
  • 小売業者が契約の数量にプラスして、20−100%のバックストックを要求する(バックオーダーを避けるためだが、スタートアップのキャッシュ・フローのネガティブインパクト大)
販売
  • 製品価格は製造コストの2.5倍が損益分岐点。ただし、コストベースで販売価格を設定すべきではない
  • 95セント vs 99セント、120セント vs129セントでは消費者の価格に対する印象はかわらないので、安い価格設定をするべき(95セントと120セントを選択すべき)
  • アマゾンなどのオンラインリテーラーのマージンは、最終販売価格の12−20%
  • BEST BUYなど大型量販店のマージンは、最終販売価格の30−35%
  • アップルストアのマージンは、最終販売価格の50%。ストックも少量だが、ブランディングの観点からトライする価値あり
  • 商品を量販店で展示する販促費用は、1店舗あたり$1,000−5,000
  • モノが実際に売れた時だけ、リテーラーがお金を支払うケースが50ー85%。リテーラーが販売前にモノを購入/支払いするケースのほうが少ない
  • 製品のライフサイクルは一般的に18ヶ月
  • 生産、輸送、卸売、小売といったすべてのサプライチェーン上のリスクは、スタートアップが100%引き受けるものと覚悟すべき
  • 店舗での売上の小売からの入金は90日後に設定されるが、遅延等により150日後になるケースもある
  • $5millionの商品価値のPL保険は、$10,000−30,000
エグジット
  • 自分の技術やプロトタイプ等を大企業にライセンスする場合のロイヤリティは製品売上の2−5%なので、ライセンス型のビジネスモデルの選択は慎重に行う必要あり
  • 同じ売上高でも1回の販売のみで終わるモデルの事業と、繰り返しの販売が見込めるビジネスでは、後者の方が10倍市場価値が高い
  • 成功したスタートアップの平均は、最初のVCの投資から6年で4,200万ドルを集め、2.42億ドルでエグジット
  • エグジットに成功した創業者のうち65%は、税引後で1,000万ドル以下のお金しか得られていない。すなわち、自分が本当に好きな事業をやるべき!!!

以上が、アーリーステージのハードウェア・スタートアップ経営者が絶対おさえておくべき数字集だ。

経営者は、こうしたざっくりした金額/期間に関する数字感をおさえておくことで、事業のリスクを最小化できる。

卒業まであと25日!!!

P.S. MITらしいオブジェ



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