2015年5月19日火曜日

成長著しいフィリピンのスタートアップで働く


フィリピンのスタートアップで約2週間のインターンを実施した。アジアの成長している国で働いてみたいという思いと、英語を使う環境で仕事をしてみようという思いから、シンガポールか、フィリピンで働ける先を探していたところ、MIT Sloanの卒業生が創業したKalibrrというスタートアップがフィリピンにあることがわかり、コンタクトをとったのがきっかけだ。

Kalibrrは、現在、フィリピンで最も注目されているスタートアップの1つだ。フィリピンで最初にY Combinatorに採用された企業でもある。日本のベンチャーキャピタルからも出資を受けている。U.C. バークレー出身の2人のフィリピン系アメリカ人が会社を経営している。

Kalibrrのビジョンは、LinkedInのスキルセット版をつくり、伝統的な経歴書(レジュメ)から人の能力を測る採用プロセスの仕組みに、変革を起こすことである。日本では、SPIを提出して、エントリーシートを出して、面接を受けるというプロセスがある程度確立しているが、アジアでは、未だ縁故採用中心で、採用プロセスがないエリアも多い。そうした地域に、デファクトスタンダードとして新しい仕組みを導入していきたいと考えている。

Kalibrrは、まず最初のビジネスとして、コールセンター専用の適正試験を作っており、コールセンター会社がこのテストのスコアで、求職者をスクリーニングするサービスを提供している。フィリピンでは、100人の求職者がコールセンターに応募しても、スキル不足により、実際には10人以下しか採用できておらず、この大量の面接プロセスが採用側にとっての非効率をうんでいる。求職者もこのテストを通じてコールセンターが求めるスキルセットを学ぶことができる。求職者と採用者の両方にとってメリットのある仕組みとなっている。

コールセンターを中心とするBusiness Process Outsourcing (BPO)のビジネスは、インドと並んでフィリピンの一大産業で、今後も需要の拡大が期待されている。Kalibrrは面白いポジションにいると思う。

CEOのPaulは、シリアルアントレプレナーで、自分と年齢が1つしか変わらないが、ビジョナリーで、自分が尊敬する経営者の1人だ。彼の素晴らしいビジョンと情熱、そして人懐っこい笑顔が人を惹きつける要素になっている。

インターンでは、当社の海外戦略の策定、特に日本企業との戦略的提携を視野に入れた市場調査を行った。ただ、インターンの2週目に、会社の社員旅行がかぶってしまい、自分もそれにお呼ばれしたので、フィリピンの滞在は、半分休暇っぽくなってしまった。ただそのお陰で、若い従業員たちとも親交を深めることができた。彼らは、ほとんどが新卒1−2年目だが、フィリピンのトップ大学を出た優秀な人たちだ。

フィリピンは、高い英語力、人口規模、平均年齢の低さ、経済の成長速度、携帯電話の普及率等から、今後大きく伸びるポテンシャルを持っている面白い国だと思う。特に自分が滞在していたマカティ周辺は、ショッピングモールや高層マンションが次々と立ち並んでおり、アジアの大都市らしい勢いを感じる。

一方、課題はインフラ面で、他のアジアの大都市と同様、渋滞が大きな問題になっている。JICAが支援したメガマニラ構想のビデオは非常に興味深いのでよかったら見ていただきたい。インフラ面での整備が進めば、フィリピンには大きな可能性があると考えている。

フィリピン滞在中に、CEOのPaulが共同代表を務めるManila Angelというエンジェル投資家の会合にも参加させてもらった。欧米の投資家たちが複数参加しており、フィリピンが投資対象として注目を浴びていることを、肌で感じることができた。

卒業まであと17日!!!

P.S. 社員旅行で行ったフィリピン・ボラカイ島
(世界で最も美しい島に認定されたこともある)


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2015年5月18日月曜日

戦略コンサルタントが提供する5つの付加価値

1年生の夏休みに戦略コンサルティング会社で2ヶ月間、フルタイムのインターンを行った。実際のプロジェクトに入り、コンサルタントがどういう付加価値を出しているかについて、真剣に考えてみたので、自分の考えをシェアしたい。あくまで、インターンという第3者としての意見である点は了承願いたい。自分は、グローバル展開する日本のメーカーに新しいサプライチェーン・マネジメントの仕組みを導入するプロジェクトを担当した。

1.プロジェクトの強力な推進ドライバー
大きな変化を社内にもたらす時、短期間で一気に改革することが重要なケースが多いと思う。M&A後の統合(Post Merger Integration)などがその代表例だ。しかし、社内のメンバーのみでプロジェクトチームを組んだ場合、うまくいかないことが多い。なぜなら、1)社員が他の仕事を掛け持ちしているケース、2)通常業務から、改革モードに急激にシフトできないケース、3)そもそもプロジェクトの専門知識がないケースがあるからだ。自分が担当したプロジェクトはこの3つに当てはまっていたと思う。そこで、短期間の高性能派遣社員として、コンサルタントが社内の改革を推進するドライバーとしての役割を担っていた。

2.組織の壁/ヒエラルキーを超えるサポート
通常、社内で話をする場合は、担当者>課長>部長>取締役>社長といった形で話があがっていく。例えば部長が反対意見を持っていれば、案件を潰されてしまうケースがある。こうした点で、コンサルタントのマネージャーレベルから、クライアントの取締役レベルに直接話ができる関係性を築くのが一般的なので、組織のヒエラルキーの弊害を取り除くことができる。それゆえ、トップダウンに近い形で、スピード感を持って物事を進めるサポートができる(上記の例でいえば、反対意見を持つ部長へのフォローも行う)。

3.専門知識の提供
外資系の戦略コンサルティング会社は特に、世界中の社内外の業界エキスパートに電話/メール1つでアドバイスをもらえる仕組みが整っている。自分が想像している以上に、クライアントは、専門知識や他社事例・他社比較に期待していることが多かったので、こうしたエキスパートのネットワークから得られる専門的見解を共有する付加価値は高い。

4.第三者意見の提供
第三者意見というのは、内部を説得材料として有用に働くケースが多い。結論ありきの案件もあるようだが、いずれにしろ、データやロジックで裏付けをして、クライアントの決断を補強するのは重要だ。これは、決裁権者の保身(失敗した際の責任の転換)や、株主訴訟を回避する意味合いも含まれていると思う。

5.海外企業/支社とのコミュニケーション支援
日本企業の場合、新しい仕組みをグローバルで導入しようとする場合、文化/語学の壁で頓挫するケースがあると思う。例えば、本件でも、"なぜその仕組みを導入することが必要なのか"という、半ば反対に近いような意見が、複数の販社から出てきた。その際、業界のエキスパートとして、英語で説得に当たることも、日本企業にとっては付加価値だと思う。


コンサルタントになるデメリットは、1)ワークライフバランスをある程度犠牲にしなければいけないこと、2)時間単位の高い成果が求められており、精神的プレッシャーを自己管理する必要があること、3)クライアントの求める枝葉的な仕事も含めて、サービス業として対応する必要があることだ。3番目については、クライアントがやるべきことはクライアントにお願いし、小間使いにならないよう、リソースマネージメントしていくことも重要だ。

自分の周りにも、コンサルタントという仕事について懐疑的に思っている人は結構いる。そういう人たちは、なんとなくのイメージで話をしているか、実際に付加価値を出していないコンサルタントと仕事をする経験があったのだと思う。

以上が、インターンの感想も兼ねた自分が考える戦略コンサルタントが提供する5つの付加価値だ。

卒業まであと18日!!!

P.S. イスラエルの死海(濃い塩分濃度で、身体が浮く)



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2015年5月17日日曜日

G Lab: セルビアのスタートアップの営業/組織構築を支援する(2)


昨日に続いて、G Labプロジェクトの続きを記載したい。

当社からのリクエストである、"CEOやCOOの人脈に依存した営業展開で、営業が1人もいないので、事業拡大に向けて、営業組織/営業プロセスを導入したい "という課題に取り組んでいる。

営業プロセス:
  • 営業プロセスは、Identify、Approach、Pitch、Close、Maintainの5つに分類する
  • Identifyは、当社が営業すべき相手をソーシングするリソースを定義する。当社の営業が訪問すべき、地域毎のベンチャーキャピタル、インキュベーター、ハッカソン、展示会、カンファレンス、ビジネスコンペティションなどを具体的に記載する
  • Approachは、上記でIdentifyした相手に対して、どういう優先順位で実際にコンタクトするかを記載する。例えば、問い合わせ対応>展示会等でのアプローチ>LinkedIn>コールドコールなど、優先順位をつけていく
  • Pitchは、まず、現状どういった営業資料を使っているか、それが有効に機能しているかを整理する。次に、専門誌への記事投稿(ホワイトペーパー)、ケーススタディ、クライアントからのフィードバック、展示会への出展、ビデオデモ、個別デモなどの中から、どれが当社の営業スタイルにフィットするかを分析する
  • 現状の営業資料についても、”クライアント名、ケーススタディをいれるべき”、”数値化したクライアントへのベネフィットを記載すべき”等のフィードバックを実施した。あわせて、60秒のエレベーターピッチやコールドメールの文章案を作成した
  • Closeは、現状当社が行っている無料のプロトタイプ制作が、時間及びコスト面で負担になっているので、どの程度の負担感でデモを提供するかの基準を作成する。また、プロトタイプに費やした労力が報われるよう、契約締結後もシームレスにプロジェクトへ移行できるようにアドバイスする
  • Maintainは、プロジェクト終了後に、アカウント責任者を、プロジェクトマネージャーからセールスマネージャー(またはカスタマーサクセスマネージャー)に移行し、顧客からのフィードバックや顧客満足度の調査の管理、定期的なコンタクトによる営業機会の創出を行う

マーケティング:
  • 近年は、アウトバウンド型(プッシュ型:コールドコールなど)の営業からインバウンド型(プル型:顧客の参考となる専門情報を発信することで、顧客からの問い合わせを待つスタイル)の営業に重点が置かれるようになってきているので、営業プロセスと関連して、オンライン上のマーケティングに関しても支援を行った
  • 当社は、営業資料とWebsiteの会社の方針/強みに関するメッセージが一致していなかったので、まずはオンライン上でのマーケティングのメッセージに一貫性がでるようアドバイスをする
  • 例えば、Websiteに、ミッション・ステートメント、会社のコアとなる強み、ケーススタディ、チーム紹介の掲載をすることや、会社紹介ビデオの作成をアドバイスした
  • 次に、欧米では営業/マーケティングとして重要なLinkedInについても、アップデートがほとんどされていなかったり、各従業員の会社の事業に関する記載に一貫性がなかったりしたので、これを修正することからスタートした
  • ソーシャルメディア・マーケティング/リサイクルを実施する
    • 例えば、月初めに専門的内容の500−1500字のブログを書き、Twitterで、ハッシュタグをつけてつぶやく。1週間後に同じブログをLinkedInにポストし、今度は前回と違うハッシュタグやテキストをつけて、Twitterで再度つぶやく。2週間後に、同じブログをFacebook、Google+、Websiteなどにアップロードする。これにより、同じコンテンツをリサイクルしながら、マーケティング活動を強化できる。アメリカでは一般的に取られている方法だ

以上が、前回とあわせて、MIT Sloanチームが当社に対して行った支援だ。幅広いトピックをカバーすることで、自分としても会社を俯瞰する視野が広がった。

当社の支援で感じたのは、会社が本当に成長すべきかは選択であるという点だ。当社のCEOは、現状の規模感で、従業員と友達感覚でいれる方が心地よいと感じている。言葉では成長したいというものの、本当にそう思っているのか疑問な部分があった。一旦、ベンチャーキャピタルから支援を受けてしまうと、否応なしに成長が求められる。ただ当社は、現状自己資金で会社を経営しているので、選択の余地がある。中小企業として安定の道を歩むか、成長して大企業への道を志すか。ビジネススクールにいると、成長が善という感覚を持ってしまいがちだが、これは選択なのだと改めて感じたのであった。

卒業まであと19日!!!

P.S. セルビア滞在中の週末に訪れたギリシャ・アテネ

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2015年5月16日土曜日

G Lab: セルビアのスタートアップの営業/組織構築を支援する(1)

Global Entrepreneurship Lab(G Lab)というMIT Sloanの看板授業がある。毎年150人以上のMIT Sloan生が、アジア、南米、アフリカなど、世界中のスタートアップに派遣され、現地の企業に対してコンサルティングを行う。通期の授業に加えて、3週間現地に滞在し、各国のビジネス習慣や文化などをあわせて学ぶ。

自分は、アメリカ人、メキシコ系アメリカ人、中国系カナダ人と4人でチームを組んだ。3週間という比較的長期に渡り、朝起きてから寝るまでアメリカ人と一緒に生活するのは初めての経験だったので、彼らの話す芸能ネタ、映画、音楽がわからず、ある意味、話のネタを見つけるのが大変だったが、Sloanの生活のハイライトともいえる印象的な経験になったと思う。


クライアントは、東欧セルビアにある30人程度のスタートアップで、Internet of Thingsや信号処理に関連したハードウェアを開発している。今後、組織を50人、100人と拡大していくに辺り、会社に必要な様々な仕組みに関するアドバイスがほしいというもので、具体的に以下の2つのニーズがあった。


  1. 縁故採用中心のファミリー企業に近い状況なので、事業拡大に向けて、きちんとした組織/人事制度を導入したい
  2. CEOやCOOの人脈に依存した営業展開で、営業が1人もいないので、事業拡大に向けて、営業組織/営業プロセスを導入したい

複雑な仕組みを導入してもスタートアップには実行が難しいので、シンプルなものになるよう心がけた。こうした将来の組織像は、大抵経営陣の頭のなかにあるけど、それが文章化されていないケースが多いので、まずは彼らに丁寧にインタビューを行い、彼らの考え/ニーズを把握した。CEOから、我々への具体的なリクエストは、"何をすべきに加えて、どうやるかを丁寧に教えてほしい"というものだった。そこで、例えば営業プロセスの一つ一つについて、日毎/週毎/月毎にやるべき仕事内容のTo Do Listと、CRM(Customer Relationship Management)データベースへの入力のやり方を含めて、詳細に記載した。


以下は、Sloanチームが行ったことを箇条書きで記載したい。



組織図:

  • 現在の組織図と将来の組織図を人員規模のフェーズに分けて設計する。例えば、従業員50人超で新設するポジション、従業員100人超で新設するポジションを記載する
  • 各ポジション毎の仕事内容、レポーティングラインを設計する

採用プロセス/キャリア・パス:

  • 採用サイトへの掲載、人からの推薦、LinkedInでのアプローチなど、自社が欲しいと思う人材に対しての最適なコンタクトルートを洗い出す(Talent Acquisiton)
  • 次に、インタビューの回数、インタビューワーのポジション、インターンシップの必要性、試用期間など、採用プロセスを決定する
  • 続いて、入社後のキャリア・パスを作成する。例えば、エンジニアであれば、入社して、ジュニアエンジニア2年、アソシエイトエンジニア2年、シニアエンジニア2年を経験する。次のステップとして、エンジニア寄りのキャリアを今後も歩んでいくのか、エンジニアの経験を活かせる別のパス(プロジェクトマネージャーやセールスマネージャーなど)も設計する
  • 最後に、キャリアパスに基づき、成果、人格、勤務年数、経験等を踏まえた昇進のための基準を設計する

評価システム:

  • 人事、評価当事者(マネージャーとエンジニア)、評価委員会の3つにわける
  • 人事は、プロジェクト毎の評価(Project Evaluation)と年度末評価(Overall Performance Assessment)に関する評価シートを作成し、評価プロセス全体の統括を行う
  • プロジェクト毎の評価は、エンジニアの自己評価+マネージャーの評価で決まり、年度末評価は、プロジェクトの評価と勤務年数をベースに評価する
  • 相対評価を採用する場合、各評価項目において、トップ5%をA、上位30%をB、中位60%をC、下位5%をDの4段階評価をする。総合評価で下位5%の場合は解雇も検討する
  • 主に経営陣で構成する評価委員会は、上記の2つの評価に基づき、各人の総合評価・昇進の有無・成長ニーズ(改善点)等を決定する

明日は、当社の営業プロセスの構築とマーケティングについて記載する。
なお、ベオグラードは、観光地は少ないが、ステーキが安価で美味しい。3週間もいたので、Trip Advisor上位のレストランや当社の経営陣が薦めるレストランはかなりまわることができた。

卒業まであと20日!!!

P.S. セルビアの首都ベオグラード(カレメグダンから眺める夕焼け/1999年のNATO軍による空爆跡)





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2015年5月15日金曜日

MBA受験体験記(TOEFL、GMAT、エッセイ、インタビュー)


MBAの最後の授業が終わった。総括は改めてしたいと思うが、今思うとこの2年間の経験は、ここに来るまでの苦労に見合うものだったと思う。仕事をしながらのMBA受験は本当に大変だった。

自分は受験生活の8割はTOEFLとGMATの試験勉強(特にTOEFL)に費やした。大学に入学して以降、ロクに英語を勉強しておらず、仕事でも英語を使うことがほとんどない純ドメだったので、TOEFLの難易度の高さに本当に驚いた。結果的に4時間近くかかるTOEFLを20回以上は受けたと思う。先輩方の受験体験記を見ると、苦労している人でも、トリプルセブンのように、すべての科目(R,L,S,W)でいい点数が揃う瞬間を見てきたので、自分にも"その時がいつか来るはずだ"と信じて受け続けたが、なかなか幸運の神様は舞い降りてこなかった。結果として、12月までTOEFLのスコアがでず、当時は本当に冷々した。


私は運良く、GMATが1回目で出願可能なスコアが出たのが幸運だったが、今でも当時その点数の実力があったかはわからない。ただ結果的に3重苦(TOEFL、GMAT、エッセイのすべてが終わっていない状態)から、逃れることができたのは精神衛生上よかった。

エッセイやインタビューも重要だが、やはりスコアが出ないと始まらない。数多くの受験仲間がこのスコアメイクで涙を飲んできた。特に、米国のビジネススクールは、点数に厳しいように感じる。トップスクールのボーダーラインは、TOEFL105、GMAT700(もしくは680)といわれているが、実際の合格者を見るとそれ以上の点数をとっている人がほとんどだ。余談だが、国内の競争が厳しい中国人やインド人の同級生に聞いてみると、GMAT750以上の人がざらだったりする。日本人にはそこまで求められていないと思うので、日本に生まれてよかったと思う笑。

以下は、MIT Sloanの日本人HPに掲載している合格体験記から、一部抜粋してきたものを紹介したい。なお、他のMIT Sloan生の方が丁寧に受験体験記を書いていて、TOEFLやGMATのノウハウも詰まっているので、よかったら参考にしていただきたい!

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TOEFL

アゴスのコースを一通り終了した後は、下記の内容を独学で学習しました。
①リーディング
まずは単語力が重要になるので、地道にTOEFLテスト英単語3800(旺文社)のRank4まで覚えました。Rank4はGMAT用で、TOEFLの試験ではRank3までで十分だと思います。GMAT終了後は、速読力(RC)と文法力(SC)が上がり、安定的に高スコアをとれるようになりました。
②リスニング
もともとリスニングを苦手としており、案の定、受験の全プロセスの中で最も苦しみ、時間を割いたパートです。徐々に聞けるようになっていく感覚はあるものの、秋になってもスコアが25を超えず、強い危機感を覚えました。英語を長時間聞く集中力が続かずダラダラ聞いてしまいがちだったことと、間違った問題の要因分析が浅かったことが終わってみての反省です。教材は、TPO(TOEFL Practice Online)が最も本番に近く、練習教材として最適でした。日々の練習では、CNN Student News / Scientific American / A moment of Science / Breaking News Englishなどを聞いていました。
③スピーキング
過去の受験生のブログを参考に、暗記科目と割り切りました。Independentはもちろんのこと、Integratedも複数のネタを用意し、テンプレートをしゃべる時間を長くすることで、本番中に焦ってミスを連発することが減り、点数が比較的安定するようになりました。スピーキングもTPOの問題が一番、本番に近かったと思います。
④ライティング
スピーキングと同様、暗記科目と割り切ました。複雑な英語表現を含むボリュームのあるBodyネタを5個つくり、Writing塾を経営するJackのIntroとConclusionのテンプレート(パラフレーズはせず、基本コピペ)とあわせたところ、毎回Independentで550-600字書けるようになりました。問題に無理矢理ネタをつなげていたため、やや違和感があるときもありますが、それでも安定的に高得点をとることができました。Integratedは、Listening力を伸ばしトピックの内容が理解できるようになれば、テンプレートを使うことで高得点がとれると思います。

GMAT

4月中旬から勉強を始め、7月下旬のGMAT受験までGMAT:TOEFL=7:3の割合で勉強しました。GMAT受験前は、会社の夏休みを取得し、GMAT脳に切り替えました。初回で出願可能なスコアが出たため、一旦打ち切り、TOEFLにエネルギーを再投入しました。予備校は、GMATで有名な濱口塾を利用し、Verbalは同塾の教材を繰り返し解きました。濱口塾は、SCやCRで即切りできる選択肢を除外した後、迷う選択肢の中でどう正解を選んでいくかの思考プロセスを、授業の解説を通じて繰り返し頭に叩き込むことができた点が非常によかったです。Mathは、濱口塾の教材+マスアカのひっかけ問題、AWAはテンプレートの暗記のみ、IRはOGの問題を解くことで対応しました。

Essay

エッセイは、①濱口塾の濱口先生をメインに、②江戸義塾のEd、③濱口塾と提携しているMatthew、④MITの卒業生、計4名の方に見ていただきました。日本語で書き始めることでエッセイの内容が深まりやすい/内容の細かいニュアンスをカウンセラーに伝えやすい(省いた時間をテスト勉強に割ける)等のメリットから、日本人カウンセラーにしましたが、結果として正解でした。濱口先生はレスポンスが早いので、2nd Round締切直前に大量の出願書類を作成していた私にとっては本当に有り難かったです。年越しは濱口先生とSkypeをして迎えました笑。江戸義塾のEdからは、MITでいえば、「どうように感じ、考え、行動したのか、臨場感を持って伝えるべき」等の指摘があり、MIT用のエッセイにカスタマイズした修正を加えることができました。

Interview

わたしのインタビューでは、Resumeのupdate、Behavioral Question1つ、Resumeについて突っ込んだ質問2~3つ、Career Goal、Why MITを聞かれ、雑談も含めてちょうど30分で終了し、終始なごやかな雰囲気で面接を進めることができました。MITで伝統的なBehavioral Interview Questionが最近減っていると聞いていましたが、私の面接でも1つしか聞かれませんでした。一方、MITの面接ではEssayに書いていないストーリーを準備する必要があるため、ネタの整理とSTAR方式(Situation, Task, Action, Result)で説明する練習を繰り返し行いました。MITの2nd Roundの面接は3月中旬で、他校の面接をすでに複数回経験していたので、面接慣れはしていたものの、相手がAdmission Staffということもあり、独特の緊張感がありました。インタビューは、①Matthew、②Ed(MIT対策のみ)、③Rare job(日々の練習用としてはオススメ)で対策を行いました。Matthewは、ネタのストックから回答を引き出すための柔軟性(想定外の質問がきたときの対応)や、ネガティブな質問(テストスコアが低い、海外経験が少ない)がきたときも常に自分を売り込む姿勢を植えつけてくれた点がよかったです。Edは、わたしが練習でうまく回答できなかった質問についてその場で意図をくみ取り、聞き手にわかりやすく魅力的に伝わるよう整理してくれた点がよかったです。
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以上がMBAの受験体験記だ。受験を通じて、自分をサポートしてくれた上司、同僚、カウンセラー、家族にこの場を通じて改めて感謝を申し上げたい
卒業まであと21日!!!
P.S. パタゴニア/エル・カラファテのペリートモレノ氷河

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2015年5月14日木曜日

MITの図書館からデザインシンキングを学ぶ

MIT Sloanでは、秋学期と春学期にSloan innovation period (SIP)という1週間の特別学習期間がある。2年生の春にとったデザインシンキング(Design thinking)のクラスが面白かったので、共有したい。

デザインシンキングとは
Design thinkingの定義は、著名なデザインコンサルティングファームのIDEOの言葉を引用すれば、下記のとおりである。

“Design thinking is a human-centered approach to innovation that draws from the designer's toolkit to integrate the needs of people, the possibilities of technology, and the requirements for business success.” —Tim Brown, president and CEO

ユーザーへのインタビューを通じて、本当の課題/ニーズが何なのかを徹底的に追求し、それを解決するソリューションを提供することである。IDEO、frog、ziba、日本ではtakramなどのデザインコンサルティング会社や、スタンフォード大学のd.schoolなどがこの分野では有名。ちなみにzibaの濱口秀司氏の講演は非常に面白いので、時間があったら見てみるとよい。彼はUSBのフラッシュドライブを発案した人でもある。イノベーションは、"バイアスを壊すこと"+"議論をうむこと"という意味も、彼の話を聞くとすーっとはいってくる。

MIT Sloanにもデザインクラブがあり、地域のレストランや小売店などに対して、デザインシンキングを使ったコンサルティングを提供している。

図書館の改革プロジェクト
今回のSIPの授業は、2.5日の集中講義で、MITの図書館のサービスを向上させようというものだ。我々のチームは「What partnerships or services capabilities should we offer to provide a more holistic experience for users?」というお題が与えられた。実際に図書館に出向き、約10人の利用者に短いインタビューを行い、彼らのニーズを聞いて回る。インタビューから得られたインサイトは以下のものだった。
  • 学生は思ったよりも現状のサービスに満足している
  • 外部のリソース(Writing centerなど)を持ってきてほしいというニーズはなかった
  • ライブラリアンに聞かずに、欲しい情報にアクセスできるといい
  • 貴重品管理や深夜の帰宅など、安全面では問題意識を持っている人がいる
  • 休憩をとりやすい環境があれば、作業効率があがる
このインタビュー内容を色々な角度から整理し、課題を解決するためのアイデアをブレインストーミングして、ポストイットに書いてペタペタ貼っていく。それを"実行性"と"付加価値"の2軸でマッピングし、最後に下記のボードのように取捨選択する。自分は、ドローンを使って本を届けるとか、MITメディアラボで研究されている可動式の机/椅子を導入するとか、テクノロジー寄りのアイデアを複数提案したが、最後は"実行性"の観点で不採用となった笑。






最終的に我々のチームは、「Continuous Peace of mind」というビジョンの下で、「Help me spend uninterrupted time in the library」というコンセプトを提案し、図書館における理想的な行動パターン "Undisrupted journey"を示すと共に、安全面の確保(ロッカーの設置、シャトルのスケジュール表示)と利便性向上(トイレやロッカーなどのサインボードの設置と席の空き状況表示)のツールを提案した。

"ブレインストーミング中は他人の意見を否定しない"、などいくつかのルールがあり、多様な意見を一旦受け止めることにより、より深いものが出来上がっていく。"一人で作業するより、チームで作業する方がいいものができること”を、実際に肌で感じ取る代表的な経験となった。

卒業まであと22日!!!

P.S. ニューヨークの自由の女神





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2015年5月13日水曜日

スタンフォード大学サマースクールの感想

MBAは一般的に9月にスタートするので、大学の夏休みの間、多くの大学がサマースクールを提供している。MITはサマースクールがないので、自分はスタンフォード大学のサマースクール(Intensive English and Academic Orientation  for Foreign Graduate Students)に参加した。サマースクールを検討している方の参考までに、自分がスタンフォード大学を選んだ理由と修了後の感想を記載する。

よかった点:
スタンフォード大学/シリコンバレーを堪能できた:過去に1度だけJTPAのプログラムでシリコンバレーに短期滞在したことがあり、それ以来、シリコンバレーは憧れの土地だった。Google本社にいったり、Teslaの見学にいったり、現地のベンチャーキャピタリストにあったりと、シリコンバレーの雰囲気を感じることができた。週末にはワインで有名なナパバレーやサンフランシスコの観光等も楽しむことができた。MITが東海岸にあるので、西海岸の雰囲気を体験できたのは、アメリカ生活の中のよいコントラストだったと思う。

比較的詰め込み型?のプログラム:6週間のスタンフォード大学のサマースクールは、月・火・木・金の午前 9;30−11:50と13:15−15:05の2コマの授業がある。自分はとらなかったが、水曜日も希望すれば選択授業をとることができる。宿題はそれなりにあるので、他のサマースクールと比べると、詰め込み型だと思う。とはいっても本番のMBAに比べれば、時間に余裕はあるので、そこまで気にする必要はない。

ビジネススクールの準備的位置づけ:午前の授業は専攻が近い学生同士で一緒に受ける。例えば、MBA組、ロースクール組等でクラス分けをする。MBA組のクラスは、何回かケーススタディを使って、ディスカッションを行い、MBAの授業の雰囲気を経験する。MBAで必要なWriting skill等の授業もあり、自分のレポートも添削してくれる。年によって変わると思うが、自分が参加したときの午前の授業は7人だったので、発言はしやすい(発言するのは大変だったけど)。ちなみにStanford GSBの学生はわずか4人だった。午後のクラスは、最初に受ける英語力のテストを踏まえてクラス分けされる。主にリスニングとプレゼンテーションの授業である。個別のフィードバックセッションもあり、自分は英語の発音について色々とフィードバックをもらった。

デメリット:
サマースクールの中では費用が高い:期間が他のサマースクールより長いこともあるが、6週間の学費だけで$5,649かかったので、寮費などの生活費も含めるとそれなりにコストがかかる。

日本人が多い:基本トップビジネススクールにくる学生は、Internationalであっても、英語の勉強は必要ないということだろう。Visiting Scholorの方も多く、日本人の比率は全体の3分の1くらいであった。ただし、これはどのサマースクールでも大凡当てはまる事実だと思う。

生活のセットアップができない:自分は全く気にならなかったが、ご家族がいる方は、生活のセットアップを目的に、サマースクールを考えている人も多いと思いので、9月に入学する大学と違う地域のサマースクールに行くのはある意味デメリットかもしれない。ボストンでは、ボストン大学、ハーバード大学、タフツ大学などがサマースクールを提供している。携帯電話の取得や銀行の口座開設はサマースクール時に行っており、MITでも学生寮に住んでいたので、ボストンに来てから、新たにやるべき手続きはほとんどなかったと記憶している。


ということで、総じて満足しているが、それなりにコストもかかるので、フィリピンの食費・寮費込みで1ヶ月滞在して十数万円の語学学校と何が決定的に違うかといわれると、スタンフォード大学/シリコンバレーを堪能できるということぐらいかもしれない。

なお、TOEFLのスコアと簡単なエッセイをアプリケーションで提出する必要があるが、ミニマムのTOEFL iBTが71なので、米国留学を予定している方であれば問題ない。

個人的にこの滞在を通じて、ルームメートだった韓国系アメリカ人の親友ができたのがよかった。今月末も彼を訪ねて、スタンフォード大学を訪問する予定である。

卒業まであと23日!!!

P.S. スタンフォード大学の様子(全米一の敷地面積を持つ広大なキャンパス)





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2015年5月12日火曜日

リーダーシップの4つの切り口とたった1つの重要なこと

MIT Sloanには、Communication for Leadersという1年生の必修授業がある(先日紹介したCommunication Labとペアになっている)。コミュニケーションの幅広いトピックについて、様々なソフトスキルを学ぶ授業である。今回は、Sloanが教えるリーダーシップの4つの切り口と自分の経験から感じた最も重要なリーダーの要素について考えてみたい。

1.リーダーシップの4つの切り口

Sensemaking: 

常に社会の変化を敏感に感じ取り、それが事業に与える影響を解釈する力。日頃から顧客、従業員、競合企業、投資家など様々なソースから情報を集める。可能であれば、小さな実験をして、自分の考えが正しいのか、新しいオプションはないのかを検証していく。自分が常に正しいと思っている人、周りの変化への感度が低い人は注意が必要だ。

Relating: 

自分の意見の主張と他人の考えに傾聴するバランスをとり、信頼関係を築き、ネットワークをつくる力。例えば、相手の意見をオープンに、かつジャッジせずに聞き、相手の考えを理解する。相手の意見を引き出そうとする努力も必要である。また自分の意見を述べるときは、他人がどう反応するかをあらかじめ予測し、それに応えるための理由付けも準備する。他人や他人のプロジェクトを、直感で批判しがちな人は注意が必要だ。

Visioning: 
方向性を共感する人々とあるべき未来像を作りあげる力。他人が何に熱意を感じているかを感じ取る。たとえ、そのビジョンを達成するやり方を知らなくても、ビジョンが非常に力強いものであれば、他人がやり方を考えてくれる。自分のメッセージを伝えるためのイメージ、ストーリー、メタファーを使うとさらに効果があがる。逆のパターンは、”ついついなんでこんなことやるんだろう”と考えたり、1つのことになかなか打ち込めないタイプの人である。

Inventing: 

アイデアを現実のものにするためのやり方を考え、課題を解決するための行動をとる力。今のやり方が最適と考えず、常にどういう選択肢があるか、外部環境の変化によってどう取りうる手段を変えるべきかを考え続ける力である。会社のビジョンと、自分たちが今実際にやっていることのギャップを意識し、それを埋める努力が必要である。

もちろんこれらがすべて完璧な人はいない。必要なのは、すべてを完璧にするのでなく、自分の強みと弱みを認識し、それを補完してくれるパートナーを探すことである。MITに来る投資家が、共同創業者がいないスタートアップには投資をしない、というのは、スキルに加えて、リーダーシップでも異なる役割を共同創業者同士に期待しているのだと思う。

日本人は、自分自身も含め、RelatingとInventingが強く、Visioningが弱い傾向にあると思う。自分がMedia Labでインターンしたときのボスは、熱意と巧みな話術で、多くの人やお金をひきつける能力を持っていた。その一方、実際にビジョンをどう実行に移すかとなると、全く詰まっていないところが多く、こちらが冷々させられたり、しまいには"君が考えてくれ"的なことを突然言われることもあった。上記のポイントに当てはめれば、Visioningが突出している一方で、Inventingが弱いといえる。

2.リーダーに最も重要な要素

リーダーに最も重要な要素は何か。自分の中での現状の回答は、どんな逆境でもあきらめず、自分のビジョン/仕事にコミットし続け、発信し続ける人だ。これは意味がない、これは無理だ、と周りに言われ続け、時に孤独を感じながらも、最後まであきらめずに結果を出すことにコミットするには、相当な覚悟がいる。

5 Level of Leadershipという考えがある。以下の図のようにリーダーシップにはPosition、Permission、Production、People Development、Pinnacleの5つの段階がある。例えば、課長になったから、リーダーだと思っている人は、1のPositionで周りに認められているに過ぎない。人はあなたとの人間関係から、ついていきたいと思うようになり(Permission)、あなたが結果を出すことで、さらに信頼関係が深まる(Production)。あなたが、周りのひとりひとりに明確なベネフィットを提供することで、さらに多くの人々がついてくるようになり(People Development)、最後はあなたの名声/人格によって、人がついてくるようになる(Pinnacle)。



Source: http://www.leadershipnow.com/leadingblog/leadership_development/


MBA生活のリーダーシップで特徴的なのは、1のPositionがない点だと思う。つまり上下関係がないので、自分の言うこと聞いて!といっても"ヤダよ!"って言われてしまうか、"やるよ!"って言われて待ってたけど、全然反応がないこともある。

自分にとっての最優先事項であっても相手にとってはそうでないからだ。また、常に同じメンバーでグループ課題をやっているわけではないので、十分な人間関係が形成されないまま、議論がスタートすることも多い。結果として、自分がいかに結果を出すか(Production)が信頼を得るために、重要になっているケースが多いように感じる。

人に権限を移譲して(Delegation)、やる気にさせることは(Motivation)、言うは易く行うは難し。一部のSelf motivatedな人以外にはなかなか機能せず、人に権限を移譲した途端にプロジェクトが止まってしまうリスクがある。

だからこそ、一番重要なのは、自分がコミットし続け、周りからの信頼を勝ち取っていくことだと思う。結果として、人をやる気にさせる近道になる。MIT Asia Business Conferenceで他のオーガナイザーの反応が悪かった時には、自分はこのやり方を使い、先が少しずつ見えてきた段階から、周りのモチベーションもあがり、徐々にチームとして機能するようになってきた。

自分がやってることを正しいと信じて突き進む。そしてうまくいかなかったら、少しずつやり方を変えていけばいい。リーダーシップとは、日々の小さな実験を繰り返しながら、磨いていくものなのだ。

卒業まであと24日!!!


P.S. イグアスの滝(アルゼンチン側)



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2015年5月11日月曜日

初期のハードウェア・スタートアップ経営者が絶対おさえておくべき数字集


ボストンのBoltというハードウェア・アクセレレーターのHardware By The Numbersというセミナーが、正直、MBAのアントレ系のどの授業より内容が濃く、実践的だったので、シェアしたいと思う。

MBAの2年間、ハードウェア・スタートアップに関係するプロジェクトを複数行ってきたこともあり、自身の経験を踏まえても腑に落ちるものが多かった。チームの組成から、製品開発、ファンディング、生産、物流、販売、エグジットまで、スタートアップのタイムラインに沿って、網羅されている。

以下、アメリカのハードウェアスタートアップ向けで、かつ経験値的な要素もあり、すべての会社に当てはまるわけではない前提で参照いただきたい。

チーム
  • Founderは2人(プログラマーとディールメーカー)
  • 創業者の株式を50:50でわけるのは避けるべき(どちらかが会社を去る際にトラブルになる)
  • 製品化/規模拡大するために必要な従業員は〜8人(4人のハードウェア担当、2人のソフトウェア担当、2人のオペレーション、ビジネス担当)
  • 超優秀な従業員を採用するために必要な株式は3−10%。シリーズA後にCEOを採用する場合に必要な株式は7−10%
  • 最初の従業員のために用意する株式は2−5%。次の10人に合計10%、次の20人に合計5%、次の50人に5%と続き、最初の80人に長期でのアップサイドを提供
  • ストック・オプションを行使するために必要な最低勤務期間は平均4年
  • 最低10%のオプションプールを新しい従業員向けに用意する
製品開発
  • 製品開発サイクルは6ヶ月が目安、週1で新しいプロトタイプをつくるペースがよい
  • 製品開発/デザインでコンサルタントを雇う費用は$10,000-50,000。IDEOなどのトップファームは、$500,000
  • 特許の権利化費用は、$35,000。権利化にかかる期間は3年以上。特許は取る価値があるか、慎重に見極めるべき
  • ネットプロモータースコア(NPS)は70を目指す(NPSとは、顧客のロイヤルティーを測るツールで、製品の10段階評価で9−10をつける人の割合(%)から、1−6をつける人の割合(%)を引いたもの)
投資
  • 成功しているKickstarterのファンディング額の平均は$92,000。もし$100,000以上のファンディングをターゲットに設定していたら、ファンディング額の平均は$423,000
  • リードベンチャーキャピタルの出資比率のターゲットは20%
  • シードラウンドの投資前価値は平均450万ドル
  • 一回のファンディングで調達する額は、18ヶ月必要な資金
  • ファンディングにかかる期間は平均3−6ヶ月
  • AngelListに登録しても、過去に投資の引受実績がなければ、投資は受けられない
  • 投資家向けのよい説明資料は15ページ前後
  • 融資と投資のバランスは2:1がよい
生産
  • デザインと生産に使う時間は1,000:1(小さなデザイン変更が生産工程に与える影響大)
  • 中国の生産パートナーが引き受ける最低出荷量は5,000個(金額ベースでは年間1百万ドルの出荷金額)
  • 生産委託の際は、10−12の生産パートナーの調査を行い、5つに見積もりをとり、2つと交渉する
  • 生産パートナーを探すプロセスは、調査、見積もり、交渉、契約まで3ヶ月程度
  • デザインの提出から、ライン立上げ、生産、製品の船積みまで平均9ヶ月(早いと6ヶ月)
  • 見積りで注意深く交渉するのは金額の高い3−4つの部品(メモリ、プロセッサー、通信パーツ)に絞るべき(かける時間あたりの効果が限定的であるため)
  • 中国での射出成形金型の費用は最もシンプルなタイプで$6,500
  • 間違ったプロセッサーを選択すると、(ファームウェアが複雑であれば)コードの書き換え等で6ヶ月のタイムロスになる
  • 初期の歩留まりは95%程度。99.5%をターゲットにする
  • 米国で製品認証のテストにかかる費用は最低$15,000
  • 段ボールのコストは$0.25−0.50、製品パッケージは$5−15
物流
  • 中国の船積みからアメリカまでの海上輸送は4週間
  • 航空便は、船便の10倍のコスト。輸送は2日間
  • 関税は地域により異なるが出荷金額の3−5%が一般的
  • サードパーティーロジスティクスは利用する価値あり。出荷金額の2−5%
  • カリフォルニアからニューヨークまでの陸送はパレットあたり$1,000。輸送に4−5日間
  • 小売業者が契約の数量にプラスして、20−100%のバックストックを要求する(バックオーダーを避けるためだが、スタートアップのキャッシュ・フローのネガティブインパクト大)
販売
  • 製品価格は製造コストの2.5倍が損益分岐点。ただし、コストベースで販売価格を設定すべきではない
  • 95セント vs 99セント、120セント vs129セントでは消費者の価格に対する印象はかわらないので、安い価格設定をするべき(95セントと120セントを選択すべき)
  • アマゾンなどのオンラインリテーラーのマージンは、最終販売価格の12−20%
  • BEST BUYなど大型量販店のマージンは、最終販売価格の30−35%
  • アップルストアのマージンは、最終販売価格の50%。ストックも少量だが、ブランディングの観点からトライする価値あり
  • 商品を量販店で展示する販促費用は、1店舗あたり$1,000−5,000
  • モノが実際に売れた時だけ、リテーラーがお金を支払うケースが50ー85%。リテーラーが販売前にモノを購入/支払いするケースのほうが少ない
  • 製品のライフサイクルは一般的に18ヶ月
  • 生産、輸送、卸売、小売といったすべてのサプライチェーン上のリスクは、スタートアップが100%引き受けるものと覚悟すべき
  • 店舗での売上の小売からの入金は90日後に設定されるが、遅延等により150日後になるケースもある
  • $5millionの商品価値のPL保険は、$10,000−30,000
エグジット
  • 自分の技術やプロトタイプ等を大企業にライセンスする場合のロイヤリティは製品売上の2−5%なので、ライセンス型のビジネスモデルの選択は慎重に行う必要あり
  • 同じ売上高でも1回の販売のみで終わるモデルの事業と、繰り返しの販売が見込めるビジネスでは、後者の方が10倍市場価値が高い
  • 成功したスタートアップの平均は、最初のVCの投資から6年で4,200万ドルを集め、2.42億ドルでエグジット
  • エグジットに成功した創業者のうち65%は、税引後で1,000万ドル以下のお金しか得られていない。すなわち、自分が本当に好きな事業をやるべき!!!

以上が、アーリーステージのハードウェア・スタートアップ経営者が絶対おさえておくべき数字集だ。

経営者は、こうしたざっくりした金額/期間に関する数字感をおさえておくことで、事業のリスクを最小化できる。

卒業まであと25日!!!

P.S. MITらしいオブジェ



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2015年5月10日日曜日

生活環境:独断によるボストンの魅力7選

MIT Sloanをキャンパスビジットされる方から、「ボストンの生活環境はどうか?」という質問をよく受けるので、独断と偏見で選んだボストンの魅力7選をご紹介したいと思う。

1.世界的なアカデミック都市:
マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学が双璧をなす、世界のアカデミア都市である点が一番の魅力だと思う。タフツ大学、バブソン大学、ボストン大学など著名な大学が多く集積する。エマーソン大学や、バークリー音楽院など、芸術分野で有名な大学もある。100以上の教育機関があり、(60万人の人口に対して)25万人の学生がいるらしい。様々な大学がクロスレジスターを認めており、MIT SloanもHarvard Kennedy School(ハーバード大学の公共政策大学院)とのDual Degree Programが存在する。世界中から研究者/学生が集まってくる国際都市で、日本人も、医療、バイオ、電機、官庁、ビジネスなど様々な分野の人がボストンに在住しており、「ボストン日本人研究者交流会」や先日の記事でふれた「ボーゲル塾」等のイベントを通じて、ネットワーキングができる。

2.安全・安心な生活環境:
2013年4月のボストン・マラソンの悲劇が記憶に新しいが、ボストンは基本的に安全な街だと思う。アメリカなので、行ってはいけないエリアはあるし、深夜の一人歩きは避けるべきだが、(ケンブリッジ市は特に)日本に近い感覚で生活ができる。スタンフォード大学のサマースクールにいたとき、週に1−2回、武装強盗が出たという警告が学内に流れていたが、MITに来てからはそういった話も年に1−2回程度しか聞かない。

3.適度に都会:
これは好みだが、適度に都会というのが自分の中ではポイントだ。ニューヨークの方がモノは揃ってるし、美味しいレストランもたくさんあるが、人が多すぎて自分は酔ってしまうので、ボストンくらいの中都市がちょうどいい。寿司屋も結構あるし、ラーメンが食べたければ、二郎系の夢を語れ、山頭火、Totto Ramen、Snappy Ramen、Sapporoなどそれなりに選択肢がある。最近は、ユニクロ、ビアード・パパ、ゴーゴーカレーなどもボストンに進出しており、日本人としては嬉しい限りだ。

4.車は不要:
車はあったら便利だが、なくても生活できる。アメリカで、車がなくて生活できる都市は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストンくらいだと思う。中心部はバスと全米最古の地下鉄があれば、ほぼどこでも行けるし、自転車用の道路も整備されているので、移動がしやすい。

5.美しい街並み:
ボストンは、全米で最も歴史のある街の一つで、赤レンガ色で統一された美しい街並みが特徴。チャールズ川沿いの景色は、散歩していて本当に気持ちがよい。冬は川が完全に凍ってしまうが、春は皇居に負けないくらい桜がきれい(ちょっと褒めすぎ笑)。ランナーが多い理由も納得だ。

6.4大スポーツチームの本拠地:
ボストン・レッドソックス(ベースボール)、ボストン・セルティックス(バスケットボール)、ニューイングランド・ペイトリオッツ(アメリカン・フットボール)、ボストン・ブルーインズ(アイスホッケー)と、中規模都市にもかかわらず、4大スポーツすべての本拠地がある。2013年は田澤、上原両投手の活躍により、ボストン・レッドソックスがワールド・シリーズ優勝、2014年は、ニューイングランド・ペイトリオッツがスーパーボールを制覇しており、ボストン在住者として嬉しい限りだ。自分が滞在していたこの2年間は本当に恵まれていた。

7.美味しい地ビール:
一番最初に持ってくるか悩んだが、空気を読んで一番最後にした。ボストンは、全米でも有名なSamuel Adams(サミュエル・アダムス)とHarpoon(ハプーン)の産地で、他にも小規模な地ビール醸造所が複数存在する。これらは、見学ツアーに参加することもできる。MITから徒歩圏内にも、Cambridge Brewing Companyという醸造所がある。街の酒屋に行くと、バリエーション豊富なビールを見ることができる。パンプキンビールやブルーベリービールなど、季節毎のフレーバービールもあり、ビール党にはたまらない。

ボストンのデメリットは、生活費の高さと冬の寒さだと思う。今年のボストンは観測史上最大の積雪量で、学校が3回も休校になった。以上、簡単ではあるが、ボストンの紹介としたい。

卒業まであと26日!!!

P.S. ボストンの風景(夏のチャールズ川沿い/アパートからの夕焼け/春の並木通り)








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2015年5月9日土曜日

戦略論: UberとAirbnbが切り開いたシェアリングエコノミーの世界

ここ数年、シェアリングエコノミー(共有型経済)のビジネスが盛り上がっている。シェアリングエコノミーとは、サービスやモノを必要な時だけで、利用するサービスだ。サービスを提供する会社が、プラットフォームを用意し、貸し手と借り手を直接つなぐ点が特徴だ。その代表例がUberとAirbnb。Airbnbであれば、例えば家主の旅行や出張中に、自分の家を他人(例えば旅行者)に有料で貸すことができる。Uberは、Uberに登録しているドライバーが自分の車を使って、タクシーのように、他人を目的地まで送迎するサービスである。自分が海外に旅行するときは、この2つによくお世話になっている。言葉の通じないパリやブタペストでも、クリック1つで車が迎えに来て目的地まで送迎してくれるので、本当に便利なサービスだと思う。

下記は、Michael Cusmano教授のAdvanced Strategic Managementの授業で、実際紹介されたシェアリングエコノミーの例である。リンクを貼っているので、興味のあるものは参照していただきたい。

部屋(Airbnb, Flipkey)
車(Uber, Lyft)
自転車 (Spinister)
スキル提供 (Taskrabbit)
お金(Prosper)
駐車スペース (ParkingPanda)
日用品 (Streetbank)
農場/ガーデニング (SharedEarth)
贈り物 (Yerdie)
食事(Feastly)
ペット(Dogvacay)

さすがシェアリングエコノミーを世界に広めたアメリカだけあり、本当に様々なジャンルがある。例えば、一番下のDogvacayは、旅行などで、犬を短期間預けたい飼い主とそのシッターをつなぐサイトである。もはや、動産/不動産/生き物関係なく、シェアされているところが興味深い。ただ、ニッチなものも多く、例えば洋服のシェアサービスを提供していた99dressesは2014年に倒産している。

ビジネスモデルとしては、ネットワーキング効果(一旦普及するフェーズに入ると貸し手と借り手が相乗効果で飛躍的に増加する)が大きい一方、比較的参入が容易で、他社との差別化が難しいという性質も抱えている。

アメリカでも最初は安全性が課題といわれていたが、サービス提供者の評価(レーティングやレビュー)等を公開することや、サービスを提供する会社が一定のトレーニングやスクリーニングを課すことで、安全性を高める仕組みが導入されている。例えば、Uberでは、ドライバーの犯罪歴や運転歴などに関する独自のスクリーニングが行われる。Uberは乗車後に毎回、乗客がドライバーを評価する仕組みが有り、評価が低いドライバーは、改善指導を受け、クビになるケースもある。

時価総額4.9兆円のUberや2.4兆円のAirbnbがいずれは上場し、その資金力を背景に、上記のような会社の買収を繰り返し、シェアリングエコノミーの世界のアマゾン的な存在になったら面白いのではないかと思う。日本でも、2014年の12月に上場したクラウドワークスなどが、シェアリングエコノミーの分野に位置づけられると思うので、この分野での日本企業の活躍にも期待したい。

シェアリングエコノミーが他の伝統的な企業を脅かす存在になっていることについて、別途Airbnbとマリオットホテルを例に紹介しようと思う。

卒業まであと27日!!!

P.S.  ペトラ遺跡


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2015年5月8日金曜日

ボーゲル塾で移民問題を考える

ボストンの一つのメリットは、留学や研究で来ている日本人が多く、日本人同士の交流機会も盛んなことだ。

ボーゲル塾について

私が参加するボーゲル塾は、ハーバードの元教授でEast Asian Studies分野の第一人者であるEzra F. Vogel 先生の私塾で、"Harvard 松下村塾"とも呼ばれている。 Vogel元教授が1979年に発表した”Japan as No.1”というレポートを通じて、日本企業の高度成長期の戦略が広くアメリカに知られることになった。 ボストンで生活している日本人が月に1Vogel教授の自宅に集まり、 日本の将来について英語で議論を行う勉強会である。 勉強会は「内政」・「国際政治」・「国際経済」・「企業の国際競争力」の4つの分科会に分かれ 、月毎の担当者がそれぞれのテーマで発表を行いその後ディスカッションをする。 

自分が今年度所属している国際経済分科会では、ODA、TPP問題、外国人受入問題から、今注目のアジア投資インフラ銀行など様々なトピックを扱う。特徴的なのは参加者の多様なバックグラウンドである。 ハーバード・MITなどのMBA学生はもとより、ハーバード・タフツ・MITの他学部などに通っている 省庁・企業・研究者の方々と知りあい、議論できる場は日本にすらなかなか無いと思う。


このような方々と熱く議論を重ねながら、ネットワーキングできる貴重な機会で、 ビジネススクールとはまた違った視野の広がりを体験できるボストンならではの経験だと思う。

明日はいよいよボーゲル塾の卒業式だ。Vogel元教授への感謝と共に、議論を行ってきた同じ分科会の方々や、普段顔をあわせることの少ない他の分科会の方々との交流を楽しみたい。

外国人受入問題(広義の移民問題)について
自分が担当した「外国人受入問題」の事前勉強会資料を末尾に添付するので興味が在る方は参照していただきたい。参加者は全員日本人だが、本番は資料及び議論共に英語になる。外国人受入問題は、賛成派と反対派がほぼ同数で非常に面白いトピックだった。私自身もまだまだ素人であるため、もしご意見がある方はコメントで教えていただきたい。

私個人としては、総人口及び生産年齢人口の急激な減少に、日本経済/日本企業が耐えぬく体力はないと考えているので、外国人の受入強化は、必須と考えている。例えば、人口が減少すれば、国内マーケットに過度に依存しているサービス業などは大きく業績が悪化し、リストラの増加による失業率悪化/経済低迷/治安悪化などの懸念がある。

治安面で、外国人=危険というのは間違った考え方で、貧困=>治安悪化だと思ってるので、経済が衰退すれば、日本人の所得が下がり、治安は悪化する。カルチャーの面でも、単一民族であるがいえ、日本は排他的な部分があるが、移民の1-2世になれば彼らがうまく日本の社会に適応できるのではと、米国のアジアンアメリカンを見て感じる。1980年代後半ー90年代前半に日本で移民が増加したときとは、国内の経済状況が大きく異なる点も忘れてはならない。

国のグランドデザインとして、人口減少を許容するという考え方もある。ただその場合は、高齢化が進むので、低福祉・低負担の国づくりになる。そして、ロボット等を駆使して、労働生産性を高め、一人あたりのGDP向上をターゲットにしていくことになると思う。ただ、日本は人口規模からして、北欧やシンガポールのように小回りがきかないので、実際には難しいのではないかというとが個人的な意見だ。

外国人受入問題とは、広義の移民問題だが、移民の国といわれるアメリカでも、大規模な移民制度改革案が議会を通過できず、昨年の11月にオバマ大統領が自身の権限で大胆な改革を打ち出すなど、大きな国内問題となっている。やり方が強引な部分はあるが、下記のビデオをみて、実態に則した形に修正しようとする「不法移民500万人の救済措置」は英断だと思うし、オバマ大統領の信念に基づく強いリーダーシップと発信力には敬意を表する。





卒業まで28日!!!

P.S. 昨日のMITキャンパス(春の陽気♪)


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·       Vogel塾 事前勉強会 - 外国人受入問題 -

o   議論の目的:
·       今後日本の生産年齢人口が年間約50万人減少する中、日本の経済成長や年金制度等の社会システムを維持するため、(女性/高齢者等の活用に加えて)移民を含む外国人受入制度をどう活用していくべきか

o   高度人材の受入方針:
§  日本の全就業者の1%にあたる72万人(2012年)が外国人材 <シンガポール35%、アメリカ15%、欧州510>。うち高度人材はわずか13万人
§  日本を含めた世界各国が高度人材を積極的に受け入れる方針で、世界での人材獲得競争が激しく、人材を受け入れるための環境整備が重要
§  留学生の受入拡大・国内企業への就職支援、外国企業の誘致等の施策を強化方針

o   現状における非高度人材の受入方針:
§  開発途上国の人材育成を通じた技術移転を目的とする外国人技能実習制度が非高度人材を受け入れる唯一の窓口。FTA EPA に基づき、フィリピン・インドネシア等から看護師・介護福祉士等を受入
§  成長戦略における今後の検討方針
①対象業種拡大(現状は製造業、建設業、農業等)、②受入人数の拡大、③実習期間の延長(建設/造船:3年→5年)、④管理体制の整備
§  地域毎に必要とする外国人材を絞り込むのも一案(カナダ:州政府指名移民制度)

o   非高度人材の受入規模拡大の効果と課題
·       (効果)数百-数千万人の移民受け入れによる労働人口減少の補填による経済活性化及び社会保障システムの健全化
·       (課題)①国民世論の理解(治安面の不安、単一民族国家としての心理的抵抗)、②中長期的な日本国民の雇用機会維持、③移民受入により税・社会保障負担が増加するリスク、④政策としての実現可能性(数百万人規模の人材をどこから集めるのか、多省庁にまたがる多岐に渡る問題を整理し、中長期的な移民政策をどう設計するのか)
·       事例:オーストラリア<外国生まれ人口比率27% 世界第3位
少子化や労働力不足の問題から72年に白豪主義を撤廃、以降、台湾、香港、中国本土から華僑を中心に約800万人の若い中国系移民が流入し、経済発展に大きく寄与

o   外国人受入のための環境整備
·       本語を含めた日本文化等の理解も含めたコミュニケーションの問題
·       医療・年金、住宅、子弟の教育等の生活環境の整備
(移民統合指標MIPEX32位/37カ国中、教育分野と反差別分野が特に低い
·       経済国・留学先としての魅力向上(企業の立地競争力:日本24位、Times世界大学ランキング;東京大学23位)

議論のテーマ
o   高度人材の受入は現政策に基づき進めるべきという認識の下、非高度人材の外国人受入政策(受入規模、受入人材基準)をどう設計するべきか?

o   外国人受入のための環境整備をどう実現していくか?

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